産総研:利益相反マネジメント

産学官連携活動等の推進に伴い、役職員等が外部から得る利益等と産総研における業務や研究上の責任が衝突する状態が日常的に生じます。この状態が「利益相反」です。
産総研では、社会から見て産総研の責務や公的利益と、外部への責務や個人的利益が相反しないようするための利益相反マネジメントを行っています。

目次

産総研における利益相反マネジメントのあゆみ

背景

産総研は、2001年(平成13年)4月に独立行政法人化され、産総研の研究及び開発等の成果の技術移転をミッションの一つとして、民間企業との共同研究、知的財産のライセンシングなどの産学官連携活動を推進していくことになりました。産学官連携活動を積極的に推進していく上で、不可避的に生じうる利益相反や責務相反の問題の解決が必要不可欠であるとの認識のもと、産総研における利益相反マネージメント体制の構築に向けて検討を開始しました。そして、国内の各機関に先駆けて産総研利益相反マネメント制度を構築しました。
また、2005年(平成17年)に非公務員型独立行政法人に移行したことを契機として、ベンチャー企業創出を支援する制度や兼業制度の弾力的な運用に取り組んできました。そして現在に至るまで、民間企業や大学との人材交流を含めた連携を強化していくなかで、産総研が行う産学官連携活動の公正性、透明性等をより一層確保し、社会に対する説明責任を果たせるよう、時宜に適った利益相反マネジメントの実施に努めています。

経緯

2002年(平成14年)10月

  • 「利益相反マネジメントポリシー」制定
  • 「利益相反マネジメントガイドライン」制定

    ☛産学官連携活動の公正性、透明性等を明示

  • 定期自己申告(事後報告)の実施開始(対象:役員、職員、第5号契約職員の一部)
  • 各種研修などにより利益相反に関する啓発活動の実施

    ☛役職員等の利益相反に対する意識の向上

2005年(平成17年)10月

  • 「利益相反マネジメント実施規程」制定(「利益相反マネジメントガイドライン」廃止)
  • 定期自己申告(事後報告)の義務化
  • 事前申告を義務化

    ☛利益相反の未然防止、事前から事後までの一貫したマネジメントの実施

  • 「利益相反定期自己申告システム」を構築、運用開始

    ☛負担軽減、事務の効率化

2007年(平成19年)~

  • 申告対象者の拡充(対象:役員、職員、第5号契約職員)
  • 外部からの要請に基づく利益相反マネジメント
    (厚生労働科学研究費、AMED受託研究費、人を対象とする医学系研究)
  • クロスアポイントメント制度利用者等への対応

2020年(令和2年)~

  • 組織としての利益相反マネジメントの本格的な運用開始
  • 外部有識者で構成する「利益相反マネジメント・アドバイザリーボード」を廃止し、内部役職員等で構成されていた「利益相反マネジメント委員会」を外部有識者のみで構成する諮問機関に改編

利益相反マネジメントの目的

産総研の役職員等が、職務に関して個人的な利益を優先させている、外部活動に時間配分を優先させているなどと外部から見られることは、研究者の誠実性や、研究結果にバイアスが持ち込まれているのではないかという疑いを招くことになり、産総研での研究活動や産学官連携活動に弊害を及ぼしてしまうことになります。

利益相反マネジメントは、このような弊害を未然に防ぎ、
  • (1)公平かつ効率的な産学官連携活動の推進
  • (2)国民に対する説明責任の遂行及び透明性の確保
  • (3)リスク管理による産学官連携活動の基盤強化
を目指すために必要不可欠なものです。
産学官連携活動にブレーキをかけるものではありません。

 

利益相反マネジメントに係る規程類

利益相反マネジメント体制

利益相反マネジメント委員会

利益相反マネジメント委員会は、利益相反に高い見識を有する外部有識者で構成されており、理事長の諮問に応じて以下の事項について調査審議し、その結果を理事長に答申します。

  • (1)利益相反状況の把握に関すること。
  • (2)利益相反による弊害の発生を未然に防止するための対応策に関すること。
  • (3)利益相反状況の改善、是正等に関すること。
  • (4)利益相反マネジメントに係る施策の策定に関すること。
  • (5)利益相反マネジメントに係る指導、助言等に関すること。
  • (6)その他利益相反マネジメントに係る重要な事項に関すること。
 

利益相反カウンセラー

利益相反カウンセラーは、弁護士、公認会計士などの専門家で構成されており、役職員等からの利益相反に関する相談に対して、専門的な見地からアドバイスを行います。

利益相反マネジメントの対象範囲

対象者

産総研では、以下の者を対象にマネジメントを行っています。    
  • (1)役員
  • (2)職員
  • (3)第5号契約職員(招へい研究員)
  • (4)(1)~(3)の親族(実父母、配偶者、子)
  • <参考>対象者の人数(2021年7月2日現在)
対象者 人数
役員 9名
研究職員 2,449名
  うちパーマネント 2,263名
  うち任期付 186名
事務職員 702名
第5号契約職員 278名
 

対象とする個人的利益

役職員等の産学官連携活動等の相手先に対して有する以下の個人的利益を対象としています。
  • (1)兼業
  • (2)ロイヤルティ収入
  • (3)株式等の保有

利益相反マネジメント手法

事象発生事前マネジメント

  • (1)事前相談(任意)
    役職員等が産学官連携活動等を計画している段階において、その相手先企業等に対して個人的利益を有し利益相反の可能性があるときに、事前相談をするものです。
    利益相反マネジメント委員会事務局は、電話、メール、面談等により随時相談を受け付けており、必要に応じて利益相反カウンセラーの助言を受け、マネジメントを行います。
  • (2)事前自己申告(義務)
    役職員等が共同研究や物品・役務の調達を行う場合において、その相手先企業等に対する個人的利益の有無を申告するものです。具体的には、産総研のシステムを利用をして事前に共同研究や物品・役務調達の申請をする際に、利益相反の有無についての申告も併せて行うものです。
    利益相反マネジメント委員会事務局は、その申告内容を随時確認を行い、必要に応じて利益相反カウンセラーの助言を受け、マネジメントを行っています。    

定期自己申告(義務)

役職員等が、毎年度1回、産学官連携活動等の相手先企業等に対する個人的利益の有無を申告するものです。過去1年間の実績と今後1年間の予定を申告します。
産総研では、平成17年に構築した「定期自己申告システム」を用いて申告をします。
 

外部からの要請に基づく利益相反マネジメント

厚生労働科学研究における利益相反マネジメント

厚生労働科学研究費補助金等を獲得して研究を実施する研究代表者及び研究分担者は、『厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針(平成20年3月31日科発第0331001号厚生科学課長決定)』に基づき、所属機関に対して「経済的な利益関係」について報告し、利益相反の審査を申し出る必要があります。
産総研では、当該研究を実施する研究者から申告を受け付け、研究の透明性の確保と科学的な客観性を保証するためのマネジメントを実施しています。
   

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究における利益相反マネジメント

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が所管する研究費により行われる研究開発に参加する課題担当研究者(研究開発代表者及び研究開発分担者)は、『研究活動における利益相反の管理に関する規則(平成28年3月規則第35号)』に基づき、所属機関に対して「経済的な利益関係」について報告し、利益相反の審査を申し出る必要があります。
産総研では、当該研究を実施する研究者から申告を受け付け、研究開発の公正性及び信頼性を確保するためのマネジメントを実施しています。
 

人を対象とする医学系研究等に係る利益相反マネジメント

人を対象とする医学系研究等を実施する研究者等は、『人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)』に基づき、利益相反に関する状況について透明性を確保するよう適切な対応が求められています。
 
(抜粋)
第6章 研究の信頼性確保
第12 利益相反の管理
(1)研究者等は、研究を実施するときは、個人の収益等、当該研究に係る利益相反に関する状況について、その状況を研究責任者に報告し、透明性を確保するよう適切に対応しなければならない。
(2)研究責任者は、医薬品又は医療機器の有効性又は安全性に関する研究等、商業活動に関連し得る研究を実施する場合には、当該研究に係る利益相反に関する状況を把握し、研究計画書に記載しなければならない。
(3)研究者等は、(2)の規定により研究計画書に記載された利益相反に関する状況を、第8に規定するインフォームド・コンセントを受ける手続において研究対象者等に説明しなければならない。
   

人を対象とする医学系研究等に係る利益相反マネジメント体制

人を対象とする医学系研究等に係る利益相反マネジメント委員会

産総研では、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に基づく適切な利益相反マネジメントを実施するため、「人を対象とする医学系研究等に係る利益相反マネジメント委員会」を設置しています。当該委員会は、理事長の諮問に応じて、人を対象とする医学系研究及び人を対象とする生命科学・医学系研究の利益相反に係る事項について調査審議し、理事長に答申します。
 

人を対象とする医学系研究等に係る規程類・情報公開

利益相反マネジメントの実績

定期自己申告では、毎年度、約3,000人超の対象者から申告を受け付けており、申告率は100%を達成し続けています。
産学官連携活動等の相手先に対して個人的利益を有すると申告した者(モニタリング対象者)のうちから、毎年数名程度について利益相反カウンセラーによるヒアリングを実施し、必要に応じて助言を行っています。
 
区分 令和元年度 令和2年度 令和3年度
対象者 3,468名(-) 3,462名(-) 3,438名(-)
対象外者 65名(-) 60名(-) 66名(-)
申告者 3,403名(100%) 3,402名(100%) 3,372名(100%)
モニタリング対象者 232名(6.8%) 264名(7.8%) 264名(7.8%)
  新規申告者 54名 96名 64名
  前回申告から変更があった者 33名 32名 20名
  前回申告から変更がなかった者 145名 136名 178名

連絡先

総務本部 法務・コンプライアンス部 法務室
(利益相反マネジメント委員会事務局)

〒305-8560 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央事業所(つくば本部・情報技術共同研究棟)
電話:029-861-8014
Eメール:legals-coi-ml*aist.go.jp(*を@に変更して送信下さい。)