レアアース資源とは?
レアアース資源とは?

2026/10/21
レアアース資源
とは?
科学の目でみる、
社会が注目する本当の理由
レアアース資源とは?
レアアース(希土類)とは、スカンジウム、イットリウム、ランタノイドを含む17元素の総称です。電動車や風力発電機に使われるネオジム磁石、LED照明など、現代の先端産業に欠かせない素材として広く利用されています。
レアアース資源は、鉱床の存在だけでなく、採掘した鉱石を製錬・分離し、社会で利用できる形にするまでを含めて考える必要があります。供給や精製の多くを一部の国に依存しているため、安定供給の確保と環境負荷の低減の両立が重要な課題となっています。
電動車や風力発電機、LED照明など、現代社会を支える幅広い技術に欠かせないレアアース(希土類)。カーボンニュートラルの実現や先端産業の発展を支える重要な資源である一方、供給の偏在や環境負荷などの課題も抱えています。資源を安定的に確保しながら、持続可能な利用をどのように進めていくのか。レアアース資源をめぐる課題や最新動向、産総研の取り組みについて、地圏資源環境研究部門 鉱物資源研究グループの実松健造上級主任研究員に聞きました。
レアアース資源とは?
レアアース資源とは何か
レアアース(希土類)とは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイドを含む17元素の総称です。レアメタルと混同されることがありますが、レアメタルが希少性や産業上の重要性に着目した金属の総称であるのに対し、レアアースは特定の元素群を指します。
レアアースは一般に「軽レアアース」と「重レアアース」に分けられ、化学的な性質や資源としての特徴が異なります。そのため、鉱床の探査や開発でも区別して考えられています。
また、レアアース資源を考える際には、鉱床の発見、採掘した鉱石からの浸出、分離・精製を経て利用可能な形にするまでの一連のプロセスを含めて捉える必要があります。
希土類元素の分類と上部地殻存在度
(Rudnick and Gao, 2003)を基に、産総研が作成
レアアースが使われている主な産業分野
レアアースは幅広い産業分野で利用されています。中でも需要が大きいのが、電動車や風力発電機に使われるネオジム磁石です。ネオジム磁石はネオジム・鉄・ホウ素を主成分とする強力な磁石で、モーターの小型化・高性能化に欠かせません。また、LED照明やディスプレーに使われる蛍光体の他、光ファイバー、レーザー機器、センサー、医療機器などにも利用されています。
こうした幅広い用途を持つレアアースは、経済安全保障上も重要な資源とされています。先端産業や防衛分野に不可欠であるにもかかわらず、鉱石の採掘から分離・精製までの工程が一部の国に偏っており、供給リスクが日本の産業活動に直結するためです。
レアアース資源活用の技術的課題
見つかった鉱床を「使える資源」にするまでの課題
レアアース資源の課題は、見つかった鉱床を実際に社会で利用できる資源として開発し、商業生産につなげることにあります。資源量の評価から採掘、製錬、分離・精製、環境対策、各国や地方政府の許認可まで、多くの課題をクリアして初めて実用化が可能になります。
レアアースの探査方法は鉱床の種類によって異なります。軽レアアース鉱床では放射能探査が有効ですが、重レアアース鉱床では気候・地質データをもとに候補地を絞り込み、地化学探査を重ねる必要があります。特に重レアアースを多く含むイオン吸着型鉱床は地表近くに形成されるため、地質条件の見極めが重要です。中国以外では探査の歴史が浅く、こうした地道な調査が欠かせません。
イオン吸着型鉱床の分布図(実松・長澤, 2025に一部加筆)。
ケッペンの気候区分はPeel et al. (2007)による。イオン吸着型鉱床のほとんどが現在の温帯・熱帯地域で発見されていることは、広域探査において重要な点である。
開発コストと環境負荷の課題
レアアース資源の開発では、採掘した鉱石を製錬、分離・精製し、工業利用可能な形にするまでに多くの過程を要します。その過程では、トリウムやウランなどの放射性元素を含むものを含め、さまざまな産業廃棄物が発生するため、その適切な管理と処理コストの負担が課題となります。
南鳥島沖のレアアース泥は注目を集めていますが、全体的に高コストであること、台風などによる悪天候下での連続揚鉱の難しさが課題です。回収した泥のほとんどはそのままでは産業廃棄物となり、製錬後の廃液も発生するため、決して陸上の鉱床に比べて環境負荷が低いわけではありません。
このようにレアアース資源開発においては、資源量や技術開発だけでなく、コスト、環境負荷、許認可などを考慮して総合的に判断する必要があります。
最新の研究動向
現在注目されているレアアース研究のテーマ
現在、レアアース資源研究で注目されているテーマの一つが、重レアアースを含むイオン吸着型鉱床を低環境負荷で開発する研究です。「その場浸出法(in-situ leaching)」は環境負荷が高いというコメントも見られますが、正しく適用すれば山の植生を残し、鉱石の廃棄物をほとんど出さずに鉱山開発ができるため、従来の採掘法に比べると環境負荷が低いです。しかしながら、地中に電解質を注入する方法には地下水汚染のリスクがあり、周辺住民や自治体からの理解が得られない懸念があります。そのため正しい知識の共有とともに、環境負荷を最小限にする浸出法の開発が進められています。
世界各地のレアアース研究事情
多くの国において、レアアースは採算性や地政学的リスクの面から民間企業だけでは資源開発に取り組みにくいですが、中国では国家戦略として研究から開発まで幅広い支援が行われていることが強みとなっています。
一方、世界的には、チタン鉱床などからの副産物としてのレアアース回収や、リン灰石鉱山の残渣からのレアアース回収の取り組みもあります。鉱床の成因研究や低環境負荷の開発技術、サプライチェーンの構築などが各国の状況に応じて進められています。
日本国内の研究動向
日本ではリサイクルに関する研究が盛んです。電動車や風力発電機に使われる磁石からレアアースを回収する研究などが進められています。レアアースの多くは少量の添加剤として使われるため回収可能なスクラップは限られますが、資源確保の観点から重要なテーマです。
またレアアース鉱床の成因研究、探査や開発のための研究も進められています。その中で陸域鉱床研究と深海底泥研究が国内の主要な研究テーマとなっています。
産総研の取り組み
鉱物資源研究グループが取り組むレアアース資源研究
鉱物資源研究グループが取り組むレアアース資源研究の柱の一つは、重レアアースを含むイオン吸着型鉱床の探査です。もう一つは、その鉱床を低環境負荷で開発するための技術開発です。
具体的には、その場浸出法による地下水汚染を最小化する技術や、その場浸出法の適用が難しい地域における代替的な採掘手法の研究を進めています。
さらに、他の資源から副産物として重レアアースを回収する研究にも取り組んでいます。主産物の採算性が見込めれば、副産物として少量のレアアースを回収する形でも商業生産が可能になる場合があります。
産総研の役割は、新しい技術を生み出すことだけではありません。鉱床の成因研究や探査、低環境負荷の開発技術、副産物としての回収技術の研究に加え、産業界や行政との連携を通じて、日本に必要なレアアース原料の安定供給を支えることにあります。
今後の展望
今後のレアアース資源を巡る情勢は、少なくともしばらくは中国が大きな影響力を持つ状況が続くと考えられます。一方で、中国以外の国でも鉱山開発が進んでおり、長期的には供給源の多様化が進む可能性があります。
今後重要になる技術の一つが、副産物としてレアアースを回収する技術です。レアアースのみを目的に鉱山を開発するのではなく、他の資源を採掘する過程で回収できれば、採算性の向上が期待できます。
レアアース資源研究では、安定供給の確保と環境負荷の低減を両立させることが重要です。日本に必要な資源を確保しながら、社会に受け入れられる持続可能な開発を進めていくことが、今後の重要な方向性となります。
Rudnick, R.L. and Gao, S. (2003) The Composition of the Continental Crust, in Rudnick, R.L. ed., The Crust, vol. 3, Treatise on Geochemistry, Holland, H.D. and Turekian, K.K., eds., Elsevier-Pergamon, Oxford, p. 1–64.
実松健造・長澤真 (2025) イオン吸着型希土類鉱床の特有性− なぜ低品位鉱でも開発可能なのか−,資源地質,75,p. 57-71.
Peel, M. C., Finlayson, B. L. and McMahon, T. A. (2007) Updated world map of the Köppen-Geiger climate classification: Hydrology and Earth System Sciences, 11, 1633–1644.