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最近の研究成果

次世代トランジスタ 2018年12月4日発表

SiCを用いた次世代型トランジスタ構造を開発-トランジスタ効率の指標である通電時の抵抗を大幅に低減-

炭化ケイ素(SiC)半導体を用いた1.2 kV耐電圧(耐圧)クラスの縦型スーパージャンクション(SJ)MOSFETを開発し、SiCトランジスタの世界最小オン抵抗を達成した。また、開発したSJ-MOSFETは、実使用上重要な高温特性や動特性に優れていることを実証した。n型ピラーとp型ピラーの繰り返しからなるSJ構造はシリコン(Si)トランジスタではオン抵抗の低減効果が実証されているが、SiCトランジスタへの適用はSJ構造の作製が困難なため進んでいなかった。今回、産総研独自のSiCトランジスタの作製技術を応用してSJ構造を狭いピッチで制御良く形成することができた。これによりピッチが狭くオン抵抗が低いSJ構造のトレンチゲート型MOSFETが実現でき、1.2 kV耐圧クラスのSiC-MOSFETのオン抵抗を大幅に低減できた。今後SiCの適用が期待される電気自動車の電力システムの一層の小型化・高効率化や、新たな電力システムの創出への貢献が期待される。

今回開発した2タイプのSiCトレンチゲート型SJ-MOSFETの図

氷の再結晶化防止 2019年2月13日発表

氷の結晶化は極少量の抗凍結タンパク質(AFP)で止まる-氷の顕微鏡観察から必要な添加濃度を決定-

現在産業化が進められている魚類や菌類の抗凍結タンパク質(Antifreeze Protein、AFP)が、凍結物の品質や生命力を損なう「氷の再結晶化」を15~60 mg/Lという極めて低濃度で阻止できることを見いだした。氷は無数の単結晶氷(氷核)でできており、それらが成長と融合を繰り返して時間と共に大きな塊になる“氷の再結晶化”が起こる。AFPにはこの現象を止める能力(Ice Recrystallization Inhibition、 IRI活性)が認められていたが、その定量方法は確立されていなかった。今回、氷の再結晶化過程を観察できる光学顕微鏡システムを構築し複数種のAFPのIRI活性を定量する方法を発見した。最も低濃度(15 mg/L)でIRI活性を示すのは魚類Ⅱ型AFPであった。このAFPが氷結晶面の広範囲にわたって結合することも明らかになったが、それが強いIRI活性の理由と考えられる。

光学顕微鏡(左)で撮影した氷の経時変化 (右)

人工知能 2019年2月5日発表

工場での生産準備作業を効率化するAI技術を開発-三菱電機と産総研がFA分野へのAI活用で連携-

工場での生産前に必要となる、FA(ファクトリーオートメーション)機器の調整やプログラミングなどの生産準備作業を大幅に効率化するAI技術を開発しました。三菱電機のFA機器・システムに関する技術と産総研のAI技術との融合により、生産準備作業にかかる時間を短縮できます。今回の開発成果は、産総研の保有するAI技術が三菱電機との連携によりFA分野で有用となったものであり、今後、三菱電機のAI技術「Maisart®(マイサート)」のひとつとして、三菱電機のFA機器・システムに実装を進め、工場の生産性向上に大きく貢献します。

工場での生産準備作業を効率化するAI技術

負の誘電率 2019年2月20日発表

ナノ空間に閉じ込められた水の「負の誘電率」を発見-高エネルギー密度キャパシタ開発への新たな指針-

MXene(マキシン)と呼ばれる層状化合物の層間ナノ空間にリチウムイオンとともに閉じ込められた水分子が、「負の誘電率」を持つことを見出しました。今回発見された水分子の「負の誘電率」は、従来未開拓であったナノ空間における水分子の異常な物性を明らかにしただけでなく、この「負の誘電率」を利用すると少ないエネルギーでイオンを高密度に蓄えることが可能となるため、高エネルギー密度の蓄電デバイス(電気二重層キャパシタ)の開発に繋がる重要な成果です。

 層間ナノ空間にリチウムイオンと共に閉じ込められた水分子が負の誘電率を示すイメージ図。

ひずみセンサ 2019年2月14日発表

プラモデルのように組み立てる超薄型(5マイクロメートル)半導体ひずみセンサチップ-次世代型高性能フレキシブルデバイスの機械構造設計、精密組み立て技術-

厚さわずか5マイクロメートルの超薄型半導体ひずみセンサチップを、実装機と呼ばれる精密組み立て装置を用いて、プラモデルのパーツのように1つずつ切り離して回路上に配置配線する技術を開発した。従来の半導体センサチップは、300マイクロメートル以上と厚く硬いため、ダイシングソーと呼ばれるのこぎり歯のついた装置で切り、実装機で搬送していた。本開発のセンサチップは5マイクロメートルと極薄であり、従来法ではチップが破壊される問題があった。そのため、プラモデルのようにセンサと枠の間に切り離し部を設け、弱く押すだけで切り離して搬送できる機械構造設計と精密組み立て技術を開発した。特に、切り離し部分に力が集中し、センサや集積回路部分には力がかからない構造の設計方法を確立した。本研究成果により、5マイクロメートルという非常に薄く、曲げることができる半導体チップの製造、組み立てが可能となり、次世代高性能フレキシブルエレクトロニクス実現への貢献が期待される。

プラモデルのように組み立てる超薄型(5マイクロメートル)半導体ひずみセンサチップの図

サンゴ 2019年2月19日発表

和歌山以南の温帯域が準絶滅危惧種のサンゴの避難場所として機能/サンゴの遺伝子解析による生物集団の安定性の評価

亜熱帯域で温暖化によって絶滅の危機に瀕しているサンゴ集団の絶滅リスクを評価するために、日本西南部のクシハダミドリイシ(IUCNレッドリストカテゴリーの準絶滅危惧(NT)に属している)を採集し、集団遺伝解析を行いました。さらに海水流動とサンゴの産卵期の幼生分散のシミュレーションを行い、亜熱帯域から温帯域までのサンゴの幼生分散を調べました。その結果、昔からサンゴがいる和歌山以南の温帯域では遺伝的多様性が高く、亜熱帯域に生息する準絶滅危惧種の一部のサンゴの避難場所として機能する可能性が示されました。

20-30年前には海藻類が繁っていた場所が今は様々な種のサンゴで覆われている(宮崎県・串間市)撮影:グリートダイバーズ 福田道喜氏

原子時計 2019年2月19日発表

超省エネ・小型の原子時計の開発に成功-自動車やスマートフォン、小型衛星などにも搭載可能な高精度時計-

消費電力が極めて低い小型の原子時計を開発した。この原子時計は、構成部品のひとつである周波数シンセサイザの消費電力を大幅に削減し、さらに新たな量子部パッケージを用いることで温度制御の効率を向上させ、60 mWという低消費電力と15 cm3という極小サイズを実現している。この研究成果は、大型で消費電力が大きかった原子時計のサイズおよび消費電力を大幅に削減することで、これまで搭載が難しかった自動車やスマートフォン、小型衛星など、様々な機器に原子時計を搭載可能となり、自動運転、高精度な測位、新たな衛星ネットワークの実現を大きく加速させる可能性がある。

開発した小型原子時計 (内寸33 mm x 38 mm x 9 mm)

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国立研究開発法人産業技術総合研究所