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数理で材料開発加速

数理で材料開発加速

2026/08/20

数理で材料開発加速 複雑な形状数値データ化

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    シーズを橋渡し

     大型コンピューターおよび実験から得られるデータに対して、データ科学を用いることによる新規材料の開発研究が活発である。このデータ駆動型の材料開発とそれを活用した新たな産業創出が脚光を浴びている。しかし、新規材料などの特性の予測は、得られたデータの範囲内にとどまりがちである。

     一般に、数理モデルの構築は、自然の原理を理解するとともに、予測精度を高めるために有用である。このため、数理科学とデータサイエンスを用いて、複雑な問題をモデル化できる能力を持った人材の獲得競争が、世界中で過熱気味である。

     こうした数理の基礎的な研究は、大学を中心に行われており、有望なシーズが育まれている。産業技術総合研究所(産総研)は、大学のシーズを産業界へ橋渡しする拠点として、オープンイノベーションラボラトリ(OIL)を全国の大学のキャンバス内に設立してきた。

    東北大がけん引

     東北大学の材料科学高等研究所(AIMR)は、世界に先駆けて、数学と材料科学の連携を開始した。そこで、2016年に産総研は、東北大学と産総研・東北大数理先端材料モデリングOIL(産総研・東北大OIL)を設立した。そして、25年までの約9年間にわたって、数理を適用して材料開発を加速するさまざまな理論研究を行ってきた。

     トポロジーは、物の形に焦点を当てた数学である。だが、材料開発に用いるには、定量性に欠けることが難点である。そこで、AIMRはトポロジーを応用し、材料開発に適用可能なパーシステント・ホモロジー法を開発した。同手法によって、複雑な物の形を数値データ化してマテリアル・インフォマティックスで活用できるようになった。産総研・東北大OILは企業と共同で、多孔体など複雑な形状をもつ材料に同手法を適用し、材料開発を加速する指針を与えた。

    数理(トポロジー)の図

    ノイズ抑制課題

     また、数学と理論物理により、高次トポロジカル絶縁体という新しい概念を提案した。量子コンピューターでは、ノイズの抑制が課題になっている。しかし、これを用いることで、ノイズ耐性に優れたトポロジカル量子コンピューターの可能性が見込まれる。ただし、研究はまだ基礎的な段階にある。

     これらのように数理を活用して、全く新しい革新的な概念を引き続き提案していきたい。

    マテリアルDX研究センター
    総括研究主幹

    中西 毅

    NAKANISHI Takeshi

    中西 毅総括研究主幹

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