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世界最先端のBeyond 2 nm半導体で微細化の限界突破に挑む

世界最先端のBeyond 2 nm半導体で微細化の限界突破に挑む

2026/10/14

世界最先端のBeyond 2 nm半導体で微細化の限界突破に挑む

研究者たちの写真
    KeyPoint1980年代後半から90年代にかけて、世界屈指の半導体大国だった日本。長く冬の時代が続いていましたが、世界的な半導体競争が激化する中、先端半導体の技術で再び日本の存在感を示そうと国を挙げた取り組みが進行中です。産総研は2023年10月1日に先端半導体研究センター(Semiconductor Frontier Research Center:SFRC)を設立。世界の最先端をいく2 nm世代のさらにその先、Beyond 2 nm世代の研究開発に挑んでいます。
    Contents

    日本の半導体再興へ追い風が吹き製造技術と量産体制の構築を目指す

     産総研は2001年の設立当初から先端半導体の研究をしてきましたが、当時は半導体製造から撤退する企業が相次ぎ、共同研究先も見つからず「研究成果の出口がない」と言われる時期が続きました。そこに突然の追い風が吹いたのは2022年のことです。先端半導体の国内量産を目指すRapidus株式会社と、産学官連携の技術研究組合(LSTC)が発足。SFRC研究センター長の昌原明植はLSTCの技術開発管理本部長を兼ね、半導体産業の再興を力強く牽引しています。今なぜ先端半導体の重要性が増しているのか、昌原に聞きました。

     「生成AIが急速に発展し、生活や産業の必需品になるほど世の中に浸透しています。その陰で、例えば“データセンター1つに対して原子力発電所が1基必要”と言われるほど、非常に多くの電力を消費することが問題となっています。ソフトウェアを改造してもあまり電力効率は上がらないため、ハードウェアで対応する必要があり、そこで求められるのが生成AIに特化した低消費電力の半導体チップです。もしある日突然、それを輸入できなくなったら日本は大変なことになってしまいます。経済安全保障の観点からも、日本にとって重要な産業の半導体チップは、日本で製造できるようにしておく。そのため、国内に先端半導体の製造技術と量産体制を構築することが絶対に必要であり、危機感を持って取り組まなければなりません」

    日本の半導体が進化し続けるために2 nm世代以降の微細化を追究

     半導体の進化の歴史は、微細化の歴史と言い換えることもできます。

     「半導体は微細化するほど低消費電力化、高性能化(高速化)、低コスト化という一石三鳥のメリットが得られます。Rapidus社が2027年に量産開始を目指すのは世界最先端の2 nm世代ロジック半導体ですが、私たちはさらなる進化を目指して研究開発を進めておかなければなりません。LSTCでは1.0 nm世代と0.7 nm世代の開発、さらに産総研では0.5 nm世代、0.3 nm世代、0.2 nm世代まで狙っています」

     従来の手法では微細化が限界のため、2 nm世代を実現するためGAA(Gate All Around)構造のトランジスタが開発されました。「GAAをなるべく長く使えるよう、構造を変えずに新しい材料を使ってパフォーマンスを上げる研究開発をしています。例えば、現在使用しているシリコンナノシートの厚みは5 nm〜10 nmほどですが、自己組織的に0.7 nmの厚みでチャネル部分を作る材料があります」

     LSTCは、成果をRapidus社に技術移転する役割を担っています。その際に力を発揮するのが、産総研の先端半導体パイロットラインです。スーパークリーンルームに最先端装置16台を導入。国内で唯一、GAAの300 mmシリコンウエハーを試作することができます。これにより量産プロセスのレシピを提供し、社会実装を加速します。もう一つ、そのプロセスの良し悪しについて科学的に解析して示すことが、産総研やLSTCに課せられた任務です。

    勝機をつかむカギは専用多品種と高性能化

     こうして開発した先端技術を武器に、日本は世界の半導体市場で勝機をつかむことができるのでしょうか?

     「日本が狙うのは汎用チップの大量生産ではなく、専用チップの多品種生産です。例えば、自動車や基地局用のチップ、あるいは量子コンピュータ用チップなど世界的に見れば大きな市場ではなくても、確実にニーズがあるユーザーに必要な数だけ提供していく。加えて、生成AIの進化に対応できる、より高性能かつ低消費電力な半導体を提供する。そこに日本の勝機があります」

     また昌原は、日本の社会課題解決につながる先端半導体の利用例として、次の2つを挙げています。

     「一つは労働力不足を補うため、ロボティクスへの利用です。人と協調して作業するロボットの場合、人の動きをリアルタイムに認識するための高性能なセンサやコンピュータが必要なため、先端半導体が活躍します。もう一つは、自然災害に備えるためのAIセンシングです。例えば豪雨による土砂災害を、地質、気象、温度、振動など同時にさまざまな状態をセンシングし、AI解析によって災害発生を予測して住民の避難に役立てます」

    意欲とアイデアあふれる人材が次世代の技術を創出する

     日本の半導体の再興を支えるのは人材であり、昌原はまさに今がラストチャンスだとみています。「かつて日本が半導体製造で輝いていた時期に大活躍していた技術者がRapidus社に、アカデミアの研究者がLSTCに集まっています。もしあと10年遅かったら技術や知見が空洞化し、海外の人材に頼らなければならない状況に陥っていたことでしょう」

     今後の人材育成も大きな課題であり、大学や産業界と連携しながら進めていく計画です。特に産業界の人材育成や再教育については、産総研のパイロットラインを活用し、先端半導体の一連の製造工程を経験してもらう取り組みを始めています。

     どのような人材を求めているか尋ねると、「決して半導体の専門家である必要はなく、どんなハードを作りたいかアイデアを出せる人材も必要です。また、食品メーカーがアミノ酸の研究過程で半導体の材料を開発し、世界シェア100 %を占めている例がある通り、さまざまな業種から参入できるチャンスがあります」と、多様性重視の姿勢が伺えました。

     半導体・デジタル産業戦略(経済産業省)には、半導体市場の世界シェアを現在の5 %から15 %程度まで引き上げるという目標が掲げられています。国内の需要に応えると同時に、先端半導体の技術で世界をリードし続けることも必要です。今後は半導体に光技術が入る流れがあり、産総研では今年4月に光信号と電気信号の回路を融合する「光電融合研究センター」を設けました。そうした新しい時代に向けて、「次から次へと限界突破していくのがプロセスエンジニアの楽しみ。誰も越えられないものを初めて超える、ファーストペンギンを目指していきます」と語る昌原。日本の半導体技術者が表舞台に踊り出し、世界の最先端を走ろうと意欲的な挑戦をしています。

     本記事は2025年9月発行の「産総研レポート2025」より転載しています。

    エレクトロニクス・製造領域
    先端半導体研究センター (SFRC)
    研究センター長

    昌原 明植

    MASAHARA Meishoku

    昌原 明植研究センター長の写真
    産総研
    エレクトロニクス・製造領域
    先端半導体研究センター
    • 〒305-8569 茨城県つくば市小野川16-1 つくば西7群
    • M-sfrc-web-ml*aist.go.jp
      (*を@に変更して送信してください)
    • https://unit.aist.go.jp/sfrc/

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