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製造・健康・予防 3つの課題に挑む

製造・健康・予防 3つの課題に挑む

2026/08/24

製造・健康・予防 3つの課題に挑む 技術で人支える仕組み構築

日刊工業新聞寄稿記事「講壇」

    産総研理事長 石村和彦による日刊工業新聞「講壇」への寄稿コラムです。産総研の経営方針やそれを受けた具体的なアクション、自身の経験やマネジメント論、社会・技術動向への考えなど、石村の視点から複数のトピックを取り上げています。
    ※記事の版権は日刊工業新聞社にあり、許諾を得て掲載しています。

    人口減少と高齢化は社会と産業のあり方を大きく変えつつある。産業技術総合研究所(産総研)は、データやAI(人工知能)の活用を通じて、モノづくりの効率化や働きやすい環境づくり、日々の健康を支える技術の実装研究を推進し、社会課題の解決に取り組んでいる。

     日本の労働人口の減少に歯止めがかからない。その中で、製造やサービス、医療・介護などの現場を支えるためには、技術で人をサポートする仕組みへの転換が必要である。産総研はこうした諸課題に対応するため、2025年に3つの実装研究センターを立ち上げた。「次世代ものづくり実装研究センター」「ウェルビーイング実装研究センター」「セルフケア実装研究センター」だ。各センターの取り組みを紹介したい。

    着るエアバッグ「あすほ」の写真
    産総研の知見活用により開発中の着るエアバッグ「あすほ」

     次世代ものづくり実装研究センターでは、人手不足が深刻化しているモノづくりの実情を鑑みて、現場をサイバー空間に再現する技術を利用し、実際の工場の稼働状況や作業工程のデータを仮想環境に入力して分析。AIやロボットの活用も併せて、より効率的な手順を生産現場に反映することを推進している。

     また、このような技術によって現場の全体像を捉えることは、資源の有効利用にもつながる。例えば、ある企業との連携では、工場の設備や作業の流れの情報を収集し、その分析結果を設計や生産計画、設備の再利用に生かす。これにより、環境負荷を抑えつつ、効率が高く、より付加価値の高い企業活動を実現しようとしている。

     さらに、製品の設計、製造、使用、回収までの流れをデータによって見える化することで、資源を高効率で循環させる仕組みづくりを進めている。

     ウェルビーイング実装研究センターでは、人の動きや環境をデータとして捉え、健康や職場環境の安全性・快適さなどを向上させる技術の実装を目指している。例えば、人とロボットの協調による作業支援や遠隔就労技術、円滑なコミュニケーションを支援する仕組みなどを通じて、生産性と働きやすさを両立する新たな就労環境の実現を推進する。

     さらに、高齢化が進む中で医療や介護の負担を軽くするには、けがや病気を日常生活の中で未然に防ぐセルフケアの視点が欠かせない。そこで重要になるのが、生活の中にある転倒などのリスクを早く見つけてけがなどを予防する技術や本人の行動を変えるきっかけづくり、そして適切な支援につなげる技術である。

     セルフケア実装研究センターでは、企業と連携してこの技術の一つをすでに具体化している。高齢者を転倒によるけがから守る「ウエアラブルエアバッグ」で、化学品メーカーのダイセルが開発を進めている。産総研は転倒が起きるメカニズムや人の動きに関する知見を生かして、転倒を素早く正確に検知する仕組みの設計に協力している。

     人口減少や高齢化という大きな社会課題を具体的なテーマに落とし込み、研究成果を現場で使える技術へと磨き、社会に届ける。これが産総研が進める実装研究である。

    理事長 兼 最高執行責任者

    石村 和彦

    ISHIMURA Kazuhiko

    石村和彦理事長の写真

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