麹菌の“設計図読み込み”高速化術
\研究者にきいてみた!/
だいじに培養した麹菌(こうじきん)から胞子を回収中…。
この麹菌を使って、薬などの原料を効率よく作り出す技術を開発したのが、バイオものづくり研究センターの玉野孝一さん。きっかけは、締め切りに追われて試した“ある方法”だったとか …!?
くわしく聞いてきました(2026/05/28 プレスリリース)!
「植物や微生物が作り出す化合物は、薬や機能性材料などに利用できます。その化合物の『設計図』である生合成遺伝子を、生産能力の高い別の微生物に移植してより多く作ってもらうのが『異種生産』です。 麹菌は生産能力に優れており、安全性が高いうえに不純物も少ないため、移植先に適しているんです」
ただ、遺伝子を移植するには、大変な時間と手間がかかります。従来の方法では、遺伝子を細かいDNA断片にわけて少しずつ移植先の細胞に取りこませ、うまく取りこんだ細胞を培養してまた少しずつDNA断片を入れ…という作業を何度も繰り返して元の遺伝子を再現していました。
今回、玉野さんは24のDNA断片を混合して1度に麹菌細胞に入れるだけで、元の1本の遺伝子を再現できることを発見!移植期間が従来の約4分の1(約130日→30日)に短縮され、移植作業も1度ですむようになりました。
発見のきっかけは、実験のトラブルだったとか。
「従来の方法で遺伝子の移植を進めていたら、細胞に入れたはずのDNA断片が抜け落ちていて…。そのときは作業の期限があり、初めからやり直すのは間にあわない!もう断片を1度に入れてしまおう!といちかばちかで試してみたんです」
これまで試す人さえいなかった“24ものDNA断片を1度に細胞に入れる”という方法。切り分ける箇所や断片の端の設計に工夫を加えることで、元の1本の遺伝子を正確につなぎ直すことに成功したそうです。
「よく似た別の微生物では、5断片ほどなら1度に入れて成功した例を聞いたことがありましたが、麹菌はそれ以上のことができるんだ!と、とても驚きました」と当時を振り返ります。(そして、期限に間にあってほっとしたそう…。)
麹菌は大腸菌や酵母に比べてまだわかっていないことが多く、扱う研究者もそれほど多くないそうですが、実は日本の「国菌」にも指定されているとか(日本酒やみそなどを作るのにも欠かせません!)。
培養にも時間がかかるものの、玉野さんは「そんなところも自分の性格にはあっている気がします。役立つ化合物を麹菌でたくさん異種生産できるよう、今後もさらに研究を進めたい」と話してくれました。