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シン・バイオものづくり

シン・バイオものづくり

2025/07/10

シン・バイオものづくり 化学合成糖で作物代替

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    脱・化石資源

     カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の実現や持続可能な循環型社会の構築に向け、燃料、プラスチック、化成品などを化石資源に依存せずに製造する技術が必要とされている。こうした中、微生物の代謝機能を活用して、植物が光合成によって二酸化炭素(CO2)から生成したバイオマス由来の糖から有用物質を生産する「バイオものづくり」が、環境負荷の低減に資する技術として注目をされている。しかし現在主流のバイオものづくりは、でんぷんや油脂といった栽培作物由来の可食性有機物を原料としており、食料との競合や、土地・水・肥料といった資源の過剰消費が問題となっている。

    副反応を抑制

     産業技術総合研究所(産総研)では、非生物的に高速生産可能な化学合成糖を原料とした次世代型バイオものづくり技術を開発している。化学合成糖は、CO2とグリーン水素から合成されるホルムアルデヒドを原料とし、「ホルモース反応」と呼ばれる触媒重合反応により生産する。ホルモース反応は19世紀から知られる化学反応であり、かつては化学合成糖が植物に代わる有機物供給源として期待された。しかし、アルカリ条件下でカルシウムなどを触媒とする従来法では、反応が複雑で副反応も多く、生成される糖類は複雑な混合物となるため目的とする糖の収率が低く、生物による利用が困難なため、実用化には至っていない。

     産総研・大阪大学・豊田中央研究所の研究グループは、金属オキソ酸塩を触媒として用いることで、副反応を抑制可能な中性条件下でホルモース反応を制御した。これにより、植物の約100万倍という高速かつ高選択的な糖合成が可能となった。

    バイオものづくり、従来型は穀物が原料であるが、次世代型は化学合成糖が原料

    「代謝」を導入

     化学合成糖の実用化に向けた最大の障壁は、炭素鎖が枝分かれした糖やL型糖など、一般的な微生物が代謝できない非天然糖を含む点にある。これに対し産総研は、環境中にはL型糖などの非天然糖を代謝する特殊な微生物が存在することを確認し、さらにそれらの代謝遺伝子を導入することで、物質生産菌に非天然糖の利用能力を付与できることを実証した。今後、複数の非天然糖を効率的に代謝可能な「超甘党微生物」を合成生物学的手法により設計・構築することで、化学合成糖を原料とした真に持続可能なバイオものづくりの実現が期待される。

    バイオものづくり研究センター
    微生物物質生産研究チーム
    客員研究員

    加藤 創一郎

    KATO Souichiro

    加藤 創一郎上級主任研究員

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