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社会課題解決、迅速に新技術実装

社会課題解決、迅速に新技術実装

2026/07/20

社会課題解決、迅速に新技術実装 資源・環境制約 価値に転換

日刊工業新聞寄稿記事「講壇」

    産総研理事長 石村和彦による日刊工業新聞「講壇」への寄稿コラムです。産総研の経営方針やそれを受けた具体的なアクション、自身の経験やマネジメント論、社会・技術動向への考えなど、石村の視点から複数のトピックを取り上げています。
    ※記事の版権は日刊工業新聞社にあり、許諾を得て掲載しています。

    資源・環境制約が企業経営の重要課題となる中、産業技術総合研究所は水素や二酸化炭素(CO2)の回収・利用・貯蔵(CCUS)、サーキュラーテクノロジー、ネイチャーポジティブ技術の実装研究を通じて、社会課題の解決と新たな価値創出に取り組んでいる。

     資源やエネルギーの確保、環境配慮、自然との共生は、私たちの暮らしに密接に関わる課題である。これらは普遍的な社会課題にとどまらず、今や投資判断の基準として確立し、企業の持続的成長や競争力にも直結する経営課題となっている。言い換えれば、こうした課題への対応が、新たな企業価値を創出する機会になる。

     社会が必要とする技術を迅速に実装するため、産総研は2025年に7つの実装研究センターを立ち上げた。ここでは、これまで幅広い分野で蓄積してきた産総研の研究成果を横断的に束ねて、産総研の強みが発揮できるテーマについて研究開発から実証、評価、事業化までを一体で集中的に推進している。

     今回は、CCUS、サーキュラーテクノロジー、ネイチャーポジティブ技術について、産総研の取り組みを紹介する。

     CCUSとは、大気や排ガスからCO2を分離回収し、再利用・貯留する技術で、50年のカーボン・ニュートラル実現に不可欠である。CCUS実装研究センターはカナデビアと連携し、回収したCO2と水素から直接、液化石油ガス(LPG)の合成に成功し、さらにベンチスケールでの実証運転にも成功した。LPGは産業や家庭用の需要が高く、災害時のエネルギー源としても注目される。脱炭素対応と新たな事業機会の両立が期待される成果だ。

     資源の輸入依存度が高いわが国では、供給の脆弱(ルビ:ぜいじゃく)性がたびたび話題になる。限りある資源を循環させる技術の実現が重要だ。サーキュラーテクノロジー実装研究センターでは、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を低環境負荷で再資源化する技術の実証を進めている。従来は200度C以上に加熱しないと再資源化できなかったところ、50―70度C程度でできる手法を開発した。これにより、環境負荷を低減しつつ、ペットボトルや複合繊維の再資源化につなげる。現在は年間10トン規模の処理を目指すセミパイロットプラントの建設を進めており、連続稼働や採算性の検証を通じて実用化を目指している。

     ネイチャーポジティブへの対応も重要性を増している。自然環境の保全・回復に向けた取り組みは、投資判断や企業評価にも影響する。ネイチャーポジティブ技術実装研究センターでは、サプライチェーン(供給網)における資源の利用状況や環境への影響、水リスクなどを分析し可視化する技術を開発している。これにより企業が行う自然環境に対する活動について、より精緻に情報開示できるようになる。

     また、産総研構内の生物多様性保全にも取り組んでいる。現在、産総研つくばセンターの中で動植物が豊かなエリアを調査し、その結果に基づき自然共生サイトの認定に向けた申請を行っているところだ。

     脱炭素、資源循環、自然資本の可視化といった社会課題に対して、産総研は実装研究センターを立ち上げて迅速な社会実装を進めている。次回は、人口減少・高齢化社会への対応を紹介する。

    鮮やかな黄色の花を咲かせるラン科の多年草「キンラン(金蘭)」
    つくばセンター内で確認された希少な植物

    理事長 兼 最高執行責任者

    石村 和彦

    ISHIMURA Kazuhiko

    石村和彦理事長の写真

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