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重質炭化水素の解析

重質炭化水素の解析

2026/07/09

重質炭化水素の解析 資源の有効活用を支える

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    経験則頼み脱却

     石油・石炭は、エネルギー源や化学・素材産業の原料などとして、私たちの生活を支えている。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)社会の実現に向け、バイオマスなどの持続可能な原料の開発も進んでいる。今後、石油・石炭からバイオマスなどへ原料が移行していくと見込まれる。

     上記原料およびこれらの転換過程で生じる中間生成物は多成分であり、特に分子量の大きい重質炭化水素では分子構造を捉えにくい。そのため、プロセス設計や材料開発は、経験則に頼りがちである。石油・石炭の性質は産地によって異なり、バイオマスも種類によって性質が異なる。こうした多様な原料を適切に使いこなすには、これらに含まれる重質炭化水素の分子構造の把握が不可欠である。

    分子構造を推定

     産業技術総合研究所(産総研)は、重質炭化水素の分子構造を推定する解析技術を開発している。私たちは、元素分析や核磁気共鳴(NMR)、質量分析などの結果から、炭素・水素・窒素・硫黄・酸素の元素組成比、全炭素のうち芳香族炭素が占める割合、平均分子量などを計算し、平均的な分子構造を推定した。試料の特性に応じて、NMR分析や赤外分光分析(IR)による酸素官能基などのデータを加えることで、この分子構造の推定精度を高めた。この解析により、転換過程での装置の運転上の課題や製造工程の最適化に必要な分子情報が得られる。

    必要な分子情報を提供の図

    最適操業に貢献

     同技術を用いた例として、石油精製装置における熱交換器内部の汚れの解析がある。汚れの付着は、熱効率の低下を招き、二酸化炭素(CO2)排出量の増加につながる。汚れを分子レベルで把握して汚れの生成機構を解明し、その発生や付着を抑制・予測するための熱交換機の運転制御技術の向上を図る。また、バイオマス由来の資源をフェノール樹脂や炭素材料の原料へ転換するプロセス開発では、中間生成物の分子構造を解析し、適切な反応条件の選定を支援する。

     原料の違いによる反応性や中間生成物の性状、汚れ生成への影響を事前に見積もることは、運転条件の調整やトラブル防止に結び付く。私たちは、開発してきた分子構造の解析技術によって、原料の違いを踏まえた転換プロセスの最適化と安定操業を支えていきたい。

    エネルギープロセス研究部門
    炭化水素資源転換研究グループ
    上級主任研究員

    麓 恵里

    FUMOTO Eri

    麓 恵里上級主任研究員

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