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遷移金属不使用のNa/Al2O3二元機能触媒を用いた統合型CO2回収と合成ガスへの選択的変換

遷移金属不使用のNa/Al2O3二元機能触媒を用いた統合型CO2回収と合成ガスへの選択的変換

2026/08/05

遷移金属不使用のNa/Al2O3二元機能触媒を用いた統合型CO2回収と合成ガスへの選択的変換

研究者の写真
    KeyPoint 脱炭素社会に向けたカーボンニュートラルの実現に向けて不可欠なのが、排ガスや大気中に含まれるCO2を効率よく資源へと変換する技術です。CCUS実装研究センター(兼 エネルギープロセス研究部門)の笹山知嶺主任研究員らは、遷移金属を用いずにCO2の回収と変換を同時に実現する二元機能触媒としてNa/Al2O3(アルミナ担持ナトリウム)を開発し、大気濃度レベルのCO2から直接合成ガスを製造する革新的手法を示しました。

    研究の背景:CO2を資源化する技術を求めて

     世界各国で実現を目指す2050年カーボンニュートラルの達成に向け、日本ではCO2を排出しないだけでなく、排ガスや大気中の低濃度CO2を資源として活用するCCU(Carbon Capture and Utilization)の重要性が高まっています。しかし、大気中や排ガスに含まれるCO2濃度は0.04〜20 %と低く、そのまま反応に利用することは困難と考えられてきました。従来は、化学吸収によってCO2を高純度まで濃縮し、その後、Pt(白金)やRh(ロジウム)、Ni(ニッケル)といった遷移金属触媒によってCO(一酸化炭素)へと還元する方法が一般的でしたが、この濃縮工程は高エネルギーでコストを押し上げる大きな要因となっていました。

     こうした背景のなか、CO2の吸収と還元という2つの機能を1つの材料に担わせる「二元機能触媒(Dual-Function Material, DFM)」のアプローチが注目されてきました。従来のDFMは吸収成分としてアルカリ金属を、還元成分として遷移金属触媒を組み合わせるのが一般的でしたが、近年高騰するPtやNiなどの遷移金属の価格や供給リスク、長期安定性といった課題も残されていました。笹山らは、これらの課題を乗り越えるため、あえて遷移金属を用いない触媒でCO2変換を成立させるという新しい発想に挑戦しました。

    得られた成果:遷移金属フリーで大気CO2→合成ガスを実現

     笹山らが開発したNa/Al2O3触媒は、Al2O3(アルミナ)担体上にナトリウムを分散させた極めてシンプルな組成の材料であり、ナトリウム前駆体として安価な炭酸ナトリウムを利用することで製造工程の簡素化も期待できます。この触媒を固定層反応器に充填し、大気濃度と同等の400 ppmのCO2を供給してその挙動を調べたところ、触媒内部にCO2が選択的に吸収され、水素を導入すると瞬時にCOが生成することが確認されました。生成したCO濃度は20 %を超え、供給されたCO2濃度の500倍以上に相当する濃度の合成ガスが得られたことになります。これは従来必須とされてきたCO2濃縮工程を省略できる可能性を具体的に示す成果といえます。

     また、従来のDFMではCO2源に含まれる酸素によって遷移金属触媒が酸化されやすく、水素との反応で生成するCOの収率が低下してしまうという問題がありました。新開発のNa/Al2O3触媒は遷移金属を含まないため、そのような活性低下が原理上起こりにくいことも分かりました。そのため、酸素を含んだ実際の排ガスや大気などに対しても適用でき、実用に適した材料として期待できます。

     さらに、反応温度450〜500 ℃ではCO2転化率が90 %以上、CO選択率が95 %以上と非常に高い性能を示し、50回以上のサイクル試験でも性能の劣化は見られませんでした。遷移金属を使わない材料でこれほど高いRWGS(Reverse Water Gas Shift)反応性能が得られたことは世界でも例がなく、学術的にも大きな意義があります。また、大型装置を使ったスケールアップ試験では、水素48.1 vol%、CO 14.5 vol%というH2/CO比3.3の「産業利用に適した組成に近い合成ガス」を直接得ることに成功し、燃料や化学品製造プロセスへの接続性が高いことが示されました。

    今後の展望:連続運転プロセスと国際展開へ

     今回の触媒を実際の産業プロセスに投入するため、連続的にCO2吸収と変換を行うための反応器開発にも取り組んでいます。循環流動層を利用した実験では、連続運転でも安定してCO2回収とCO生成が進むことが確認されており、長時間運転を前提としたプロセス構築に向けて着実に前進しています。今後は反応器の熱設計や流体挙動の最適化、触媒寿命の向上など、産業実装に向けたさらなる検討が進められる予定です。

     また、H2/CO比の調整によってメタノール、FT合成(フィッシャー・トロプシュ合成)、化学品原料などさまざまな用途に展開できる可能性が広がっており、材料面ではCO2吸収容量の増大や生成速度のさらなる向上が期待されています。国際的にも二元機能触媒に関する研究は活発であり、遷移金属を使わない産総研のアプローチは、資源制約やコスト面で優位性を持つ新しい研究潮流として注目されています。CO2を負担ではなく資源と捉える未来を実現するため、今後もプロセスの実証と国際共同研究を進め、持続可能なものづくりの実現に貢献していきます。


    Integrated CO2 capture and selective conversion to syngas using transition‑metal‑free Na/Al2O3 dual‑function material
    Tomone Sasayama et al., Journal of CO2 Utilization, 60 (2022), Article 102049
    https://doi.org/10.1016/j.jcou.2022.102049
    遷移金属不使用の触媒を用いて大気濃度CO2から合成ガスを製造する技術を開発
    Continuous CO2 capture and reduction to CO by circulating transition-metal-free dual-function material in fluidized-bed reactors
    Tomone Sasayama et al., Separation and Purification Technology, 354 (2025), Article 128602
    https://doi.org/10.1016/j.seppur.2024.128602
    Mechanistic investigation on integrated CO2 capture and reduction by Na-based dual-function materials with and without Cu
    Tomone Sasayama et al., Chemical Engineering Journal, 518 (2025), Article 164481
    https://doi.org/10.1016/j.cej.2025.164481

    CCUS実装研究センター
    (兼 エネルギープロセス研究部門)
    主任研究員

    笹山 知嶺

    SASAYAMA Tomone

    笹山主任研究員の写真
    産総研
    エネルギー・環境領域
    エネルギープロセス研究部門
    • 〒305-8569 茨城県つくば市小野川16-1 つくばセンター つくば西事業所
    • epri-info-ml*aist.go.jp
      (*を@に変更して送信してください)
    • https://unit.aist.go.jp/epri/index.html

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