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MRIで脳を探る

MRIで脳を探る

2026/07/30

MRIで脳を探る 構造の動物種差を検出

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    非侵襲で画像化

     磁気共鳴画像(MRI)装置は強力な磁石とラジオ波を利用して、生体を構成する水の水素原子核(プロトン)スピンと生体内の分子環境との相互作用を計測することにより、生体の内部構造を非侵襲で画像化する装置である。脳の梗塞やがんといった疾患を検出する医療検査機器としても用いられている。近年の高磁場計測技術の進歩により、認知機能をつかさどる脳機能や神経構造までも計測できる。

    デジタル脳構築

     現在、さまざまな脳データを活用して機械学習などの数理的手法を用いて脳の構造や機能を理解・予測するシミュレーションモデルである「デジタル脳」が注目されている。産業技術総合研究所(産総研)は疾患モデル動物と疾患患者におけるMRIデータを基にしたデジタル脳を構築し、加齢による認知能力低下や精神神経疾患になる前の脳の機能変化を予測し、正常な状態を維持する方法を提案する研究を行っている。

     マカクサルやマーモセットを代表とする非ヒト霊長類は人間に近い脳構造・機能を有するため疾患研究に用いられている。しかし、脳の形状や脳溝の配置などは人間とは大きく異なり、言語や高次脳機能など人間と必ずしも同一の機能を持っているわけではない。従ってサルと人間の脳の神経構造の種差を理解し補正する必要がある。そこで我々は、10人の健常者と10頭のマカクサルの脳の神経構造を、水分子プロトンの制限拡散(生体組織の構造によって水分子の動きが制限される現象)から微細構造を推定する拡散テンソル画像法(水分子が拡散する方向や速度を画像化する方法)を用いて、1億本の神経軸索の走行(経路)を推定した。

    デジタル脳構築の図

    双方向研究進む

     人間とマカクサルの脳構造の違いを特徴づける神経走行を機械学習により抽出した結果、側頭葉(言語野を含む)、頭頂葉(感覚運動野を含む)、前頭葉の一部の結合が抽出された。これらの結果から脳構造の違いを補正し人間とマカクサルのMRIデータを統合的に解釈することが可能となり、双方向研究において高い外挿性と予測精度が得られる。将来的にはモデル動物と人間の統合的なデジタル脳を構築し、脳の状態から将来的な疾患を予測するシステムの構築につなげたい。

    人間情報インタラクション研究部門
    生体情報計測研究グループ
    主任研究員

    釣木澤 朋和

    TSURUGIZAWA Tomokazu

    釣木澤 朋和主任研究員

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