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光回路大規模化へ

光回路大規模化へ

2026/07/23

光回路大規模化へ 窒化シリコンで低消費電力

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    高速・低遅延

     生成AI(人工知能)の急速な普及に伴い、データセンターによる消費電力の増大が世界的な問題となっている。その解決策として、電子回路の一部を光回路に置き換える「シリコンフォトニクス」が有望である。

     光回路は高速・低遅延という特長を持つ。しかし、熱光学効果を利用して位相を制御するためにはヒーターへ電力を継続的に供給する必要があり、その消費電力が光回路の大規模化や高密度化を進めるうえで制約となっていた。

    低損失な光伝搬

     産業技術総合研究所(産総研)は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)互換プロセスで形成可能な窒化シリコン(SiN)光回路の研究を進めている。SiNは、可視光から近赤外域までにわたって高い透過率を持っているため、低損失な光伝搬が可能な光導波路の材料として注目されている。また、シリコンと比べ屈折率が低いため、加工ばらつきへの許容度が高く、光ファイバーとの接続損失を低減しやすい。

     これまでに、超低損失なSiN-Si光結合構造、および量子・センシング用途を見据えた可視光に対応したSiN光回路などを開発してきた。さらに近年、SiN内部に存在するダングリングボンド(未結合手)に着目し、紫外線照射と熱処理によって材料中の荷電状態を制御することで、光の屈折率を可逆的かつ不揮発に変化できることを見いだした。この技術の最大の特長は、従来の熱光学型光回路と異なり、一度設定した状態を電力なしで保持できることである。

    窒化シリコン光回路の図

    次世代基盤に

     実際に、SiN導波路を用いた干渉計において、不揮発な位相シフトを実証した。また、SiとNの組成比を最適化したSiN材料や集積ヒーター構造を導入し、プログラマブル光回路への適用を進めている。

     SiN光回路は、半導体製造の既存技術を使って形成できるため、大規模な光集積回路への展開が期待できる。SiN光回路によって、今よりも大幅な低消費電力化が見込まれる。

     今後は、フォトニックニューラルネットワークや高密度波長分割多重(DWDM)向け波長制御、光回路トリミングなどへ、低消費電力でプログラマブルな光集積回路を適用し、次世代フォトニクス基盤への展開を目指す。

    光電融合研究センター
    光電子集積デバイス研究チーム
    主任研究員

    前神 有里子

    MAEGAMI Yuriko

    前神 有里子主任研究員

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