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低耐熱材料に成膜

低耐熱材料に成膜

2026/07/16

低耐熱材料に成膜 40℃、工程設計柔軟に

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    適用材料に制限

     対象物(基板)の表面に金属やセラミックスなどのさまざまな薄膜を形成する「成膜技術」は、半導体、電子部品、光学部材など幅広い産業分野を支える基盤技術である。一般的な成膜法である抵抗加熱蒸着法では、膜の原料となる金属を数千℃に加熱して蒸発させた金属蒸気を基板に付着させるため、基板温度も短時間で100℃近くまで上昇する。また、工業用途で広く使われているスパッタリング法は、成膜材料(ターゲット)上にアルゴンなどからなるプラズマを生成し、イオンをターゲット表面に衝突させて表面の原子を飛散させ、基板表面に付着させて膜を形成する手法である。プラズマ粒子が基板にも照射されるため、基板温度が上昇しやすく、プラズマダメージも問題となる。このため、これら従来の成膜法は耐熱性の低いフィルムや樹脂材料へは適用できなかった。

    チョコにも可能

     成膜時に発生する熱やプラズマによる基板へのダメージをなくすため、産業技術総合研究所(産総研)では、スパッタリング電極に内蔵される磁石配置を計算科学を用いて最適化し、プラズマ粒子が基板側にほとんど到達しない磁気回路を開発した。これにより、成膜中の基板温度を40℃未満に抑えたまま薄膜形成が可能な「低温スパッタリング成膜技術」を実現した。写真のようにチョコレートにも溶かすことなく金属成膜が可能となった。同技術により、従来は困難だった低耐熱材料への成膜が可能となり、工程設計の自由度が大きく高まる。

     同技術はバイオミメティクス(生物模倣)分野への応用も進んでいる。トンボの複眼表面に低温スパッタで金属膜を形成し、複眼のナノ構造を写し取った「金型」を作製した。この金型への樹脂転写により、一つひとつがレンズ機能を持つ多数の個眼を表面に配置した成形品を得た。さらに、表面には実際のトンボと同様の防曇(ぼうどん)機能が発現した。

    チョコレートに金属成膜の図

    ニーズつかむ

     産総研が開発した低温かつ低プラズマダメージという特長を有する成膜技術は、バイオミメティクスの他にも、フィルム基材、医療・バイオ材料、精密部品、電顕観察の前処理分野など幅広い産業分野での新製品・新サービス創出につながる可能性を有する。今後は企業や研究機関との連携を通じ、現場ニーズの掘り起こしを進め、実装技術としての展開を目指す。

    センシング技術研究部門
    センシングマテリアル研究グループ
    主任研究員

    本村 大成

    MOTOMURA Taisei

    本村 大成主任研究員

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