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南西諸島の海洋生物保全

南西諸島の海洋生物保全

2026/06/25

南西諸島の海洋生物保全 サンゴ礁の海流移動応用

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    上流域に着目

     日本の南西諸島に広がるサンゴ礁は、世界的にも豊富な生物多様性を誇っている。一方で、気候変動などに伴い、サンゴ礁生態系の劣化が進んでいる。サンゴをはじめとする海洋生物種の多くは、浮遊幼生期に、離れた生息地の間を海流に乗って移動する。このようなサンゴ礁の相互の連結性を理解することは、保全において重要となる。例えば、海流の上流に位置し、多くのサンゴ幼生を他の生息地へ供給している海域を重点的に保全すれば、保全効果を他の生息地にも波及させることが期待できる。

    遺伝子で把握

     産業技術総合研究所(産総研)は、南西諸島の約1000キロメートルに及ぶ全海域を対象に、サンゴ幼生の供給源となる海域を推定した。遺伝子解析によりサンゴの一種であるコユビミドリイシの集団間の連結性を調べるとともに、海流モデルを用いてサンゴ幼生の移動のシミュレーションを行なった。

     遺伝子解析により、南西諸島の全域で、サンゴの遺伝子の違いは小さいことが分かった。一方、ハワイやカリブ海などでは、島と島の距離が遠いほどサンゴの遺伝子の違いが大きくなる傾向が報告されている。我々の結果は、これらの先行研究とは対照的である。

     幼生の移動のシミュレーションは、多くのサンゴ幼生が黒潮に乗って、南西諸島の南端の先島諸島から北端の大隅諸島に供給される可能性を示した。また、黒潮に逆らう小規模な流れにより、奄美群島から沖縄諸島へ多くのサンゴ幼生が供給されることも示唆された。加えて、サンゴの遺伝子の違いは、地点同士の距離よりも、シミュレーションによって推定された幼生の移動による方が、より良く説明できた。南西諸島においてサンゴ礁の保全を計画する際、島間の距離だけでなく、海流を通じた結びつきも考慮すべきかも知れない。

    シミュレーションで推定された幼生の移動によるサンゴ礁間の連結性の図

    基盤データに

     今回の研究の成果は、南西諸島での生物多様性の保全に向けた重要な基盤データとなり得る。すなわち、ある海域でサンゴが減少した際、回復を支える幼生の供給源として、どの海域に注目すべきかを判断する手がかりになる。

     同研究の評価手法はサンゴに限らず、海流に乗って運ばれる他の生物にも適用可能なため、幅広い生態系の研究や生物多様性の保全への応用が期待できる。

    ネイチャーポジティブ技術実装研究センター
    自然資本診断技術研究チーム
    研究員

    齋藤 直輝

    SAITO Naoki

    齋藤 直輝研究員

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