変革につながるアイデアは、きっと研究の最前線にある。日本最大級の公的研究機関・産総研の公式ウェブマガジン。

次世代パワーデバイス

次世代パワーデバイス

2026/06/04

次世代パワーデバイス 異種材料融合で限界突破

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    エネ管理の要

     スマートフォンに代表される電子機器が生活や産業の隅々まで普及し、さらには膨大なデータを処理するAI(人工知能)時代の到来により、電気エネルギーをいかに効率よく、かつ賢く使うかが現代社会の最重要課題の一つとなってきた。このエネルギー管理の要を担うのが、電圧の昇降圧や交流・直流の変換を行うパワー半導体デバイスである。電力損失を極限まで減らし、システムの小型化を実現するデバイスの進化は、今まさに一段上のフェーズへと向かっている。

    長所を相互補完

     産業技術総合研究所(産総研)が従来のシリコン(Si)パワー半導体デバイスに代わる高効率・小型デバイスの開発に向けて提案するのは、次世代材料として期待される窒化ガリウム(GaN)と炭化ケイ素(SiC)を一つのチップ上で融合させるという、新しいアプローチである。従来の開発は、各次世代材料の特性を個別に追求し、単一材料でSiを代替するものだった。しかし、産総研はGaNとSiCの長所を相互補完的に掛け合わせることで、単一材料では到達し得なかった高みを目指した。

     具体的には、高速スイッチングと低オン抵抗を誇るGaN層の直下に、優れた耐圧性能と高い熱伝導率を持つSiCベースのダイオードを一体的に作り込む「ハイブリッド型・高電子移動度トランジスタ(hyHEMT)」を開発した。GaNが持つ卓越した電流制御能力と、SiCが持つ極めて高い安定性を融合させることで、これまでのGaN素子の懸念であった過電圧時の破壊を回避し、1200ボルト級の高耐圧と、何度過電圧が加わっても壊れない非破壊的なブレークダウン(降伏)特性を世界で初めて実証した。

    直径100mm基板上に作製したhyHEMTと、その測定の写真

    企業と連携強化

     すでに産総研内の100ミリメートルウエハー量産試作ラインを用いて基本動作が実証されており、今後は、本技術の商用化に向け、パワーデバイスの設計・製造ノウハウを持つ企業との連携強化を目指している。高い信頼性が不可欠な電気自動車(EV)や重電機器、さらには膨大な電力を消費するAIサーバー用電源の劇的な軽量・小型化を目指して研究開発を続けている。産総研では、この革新的な技術シーズを基に、次世代パワーモジュールの社会実装に向け、半導体メーカーやセットメーカーとの共同研究を強力に推進していきたい。

    先進パワーエレクトロニクス研究センター
    パワーデバイス研究チーム
    主任研究員

    中島 昭

    NAKAJIMA Akira

    中島 昭主任研究員

    この記事へのリアクション

    •  

    •  

    •  

    この記事をシェア

    • Xでシェア
    • facebookでシェア
    • LINEでシェア

    掲載記事・産総研との連携・紹介技術・研究成果などにご興味をお持ちの方へ

    産総研マガジンでご紹介している事例や成果、トピックスは、産総研で行われている研究や連携成果の一部です。
    掲載記事に関するお問い合わせのほか、産総研の研究内容・技術サポート・連携・コラボレーションなどに興味をお持ちの方は、
    お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

    Copyright © National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
    (Japan Corporate Number 7010005005425). All rights reserved.