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液体メタンの保安距離

液体メタンの保安距離

2026/05/28

液体メタンの保安距離 爆発実験でデータ収集

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    打ち上げ増加

     内閣府の調査によると、2020年以降、世界におけるロケットの打ち上げ数は、米国と中国を中心に年20〜30%で増加している。米国では政府や米航空宇宙局(NASA)の支援の下、民間企業がロケット開発・打ち上げを主導している。その中で、液体メタンを燃料とした液体推進系ロケットが注目されている。

    実用化見据え

     液体メタンは液体水素に対し、比推力の点では及ばない。しかし、高密度、高沸点、低漏洩(ろうえい)性により、ロケットのスリム化、製造・貯蔵コストの削減、漏洩リスクの低減を可能にする。日本の主力であるH3ロケットは、液体水素が燃料である。そこで、液体メタンの利用は燃料コストや安全保障および単一の推進剤に依存しないリスク分散の観点から必要である。

     ロケット打ち上げ施設の地上安全に係る警戒区域は、内閣府が定めるガイドラインに基づき、爆風や飛散物、ガス、ファイアボールによる放射熱などの影響を考慮して設計される。これらの影響評価の根拠となる保安距離算定式は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって整備されている。液体水素の保安距離算定式は、固体推進薬とともに爆発威力に関する見直しが行なわれ、整備済みである。しかし、液体メタンについては、実用化や事業化に向けての整備が課題となっている。

    落下による燃料容器の爆発実験の写真

    算定式構築ヘ

     内閣府の「宇宙技術戦略」を背景に、産業技術総合研究所(産総研)ではJAXAと共同で液体メタンの爆発威力評価技術と保安距離算定式の構築を目指している。24年度には、JAXA能代ロケット実験場(秋田県能代市)で、1キログラム級の爆発実験を実施した。ロケット打ち上げ直後の墜落モードを模擬し、燃料容器を地上50メートルの高さから落下させ、地表衝突時の爆発に伴う爆風圧、放射熱などを計測した。計測データからの爆発威力を基に、液体メタンの爆薬相当量を示すTNT換算率を約10%と推定した。

     より実用的な保安距離算定式を構築するため、今年度中に10キログラム級の大規模な爆発実験を実施してデータを取得する予定である。

     産総研は、液体メタンに関する保安距離算定技術の整備と安全基準の確立により、民間事業者の参入を促進し、宇宙開発の持続的成長と産業競争力の向上に貢献する。

    安全科学研究部門
    総括研究主幹

    佐分利 禎

    SABURI Tei

    佐分利 禎総括研究主幹

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