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表層崩壊の影響調査

表層崩壊の影響調査

2026/05/14

表層崩壊の影響調査 水質・生態系保全に重要

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    多角的に理解

     斜面崩壊は、地震や豪雨によって急傾斜地の土砂や岩盤が流動・不安定化する現象である。近年、この現象が河川の水質や微生物生態系に影響を及ぼす可能性が指摘されている。筆者は、斜面崩壊の一種であり、厚さ数メートル程度の土層が崩落する表層崩壊が、水環境に与える影響を調査してきた。

     地震や豪雨が頻発する我が国では、表層崩壊が各地で発生し、インフラ被害や土砂流出を招いてきた。表層崩壊に関連する研究の多くは、土砂の動態に着目している。一方、河川の水質や微生物生態系といった水環境に表層崩壊が及ぼす影響について研究した事例は限られている。表層崩壊が自然環境に及ぼす影響の多角的な理解は、山岳地域における水資源の管理や生態系の保全といった観点で重要である。

    イオン濃度着目

     2018年9月6日に北海道胆振東部地震が発生し、最大震度7の揺れが観測された。厚真町および安平町では、6千か所以上で表層崩壊が発生した。斜面を覆っていた火山性土壌は崩落し、谷底に崩壊堆積物が形成された。表層崩壊が水環境に与えた影響を評価するため、筆者はこの地域で河川の水質や微生物群集を調査した。表層崩壊が多発した地域では、表層崩壊が無かった地域と比べて、河川水中のカルシウムやマグネシウムなどの陽イオン濃度は高く、硝酸や硫酸などの陰イオン濃度は低かった。表層崩壊に伴う地形の変化が地表環境における土壌・岩石・水・大気の相互作用に影響を与え、土壌や岩石を構成する鉱物の化学的風化が崩壊地で活発化して、陽イオン濃度が増加したと考えられる。陰イオン濃度が減少した主な原因は、それらを消費する微生物活動が崩壊地で活発化したことが考えられる。微生物活動の活発化が崩壊堆積物の内部で起きていたことが、環境DNA(デオキシリボ核酸)解析の結果から確かめられた。

    2018年の北海道胆振東部地震の表層崩壊

    知見を応用

     調査を進めてきた北海道の山地では、表層崩壊は土砂の移動現象であると同時に、化学的風化と微生物活動が活発に進行する場所を形成する現象であることがわかった。表層崩壊の発生が危ぶまれる地域における水資源の管理や生態系の保全のために、本研究の知見を活用できる可能性がある。

     今後は、表層崩壊地における化学的風化および微生物活動に関する実態の解明に取り組んでいく。

    ネイチャーポジティブ技術実装研究センター
    自然資本DB構築・価値解析研究チーム
    研究員

    吉原 直志

    YOSHIHARA Naoyuki

    吉原 直志研究員

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