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逆伸長でペプチド量産

逆伸長でペプチド量産

2026/02/26

逆伸長でペプチド量産 コスト・廃棄物を大幅削減

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    医薬で需要増

     ペプチドはアミノ酸が2個から数十個結合した鎖状分子で、環境や生体に優しい素材として、 中分子医薬品分野で需要が高まっている。人工的にペプチドを大量に作るために化学合成法が用いられる。しかし、従来の合成法は高価な保護アミノ酸や過剰な試薬、大量の有機溶媒を必要とし、製造・精製の両面でコストと環境負荷が大きい。例えば固相合成法では、1キログラムのペプチドを合成する際に約13トンもの廃棄物が発生する。ペプチドの利用を広げるには、高効率かつ低廃棄物の合成法の開発が不可欠である。

     ペプチドは、一つのアミノ酸のカルボキシ基と、もう一つのアミノ酸のアミノ基が脱水縮合してつながることで分子鎖を伸ばす。従来の人工合成ではカルボキシ基を有する末端(C 末端)からアミノ基を有する末端(N 末端)へアミノ酸1分子ずつペプチド鎖を伸長する手法(C→N 法)が主流である。一方、自然界では逆に N 末端から C 末端へと(N→C)伸長する。これまでにも N→C 逆伸長法による合成はあったが、不斉炭素の立体配置が反転するエピメリ化という副反応の克服が困難であったため、長年主流ではなかった。

    エピメリ化抑制

     産業技術総合研究所(産総研)は東京大学と共同で、ペプチド C 末端をカルボン酸の酸素の一つが硫黄に置き換わった「チオカルボン酸」に一工程で 変換し、安価な主鎖無保護アミノ酸や複数のアミノ酸が結合したペプチドブロックと選択的にカップリングさせることで、効率的に複雑なペプチドを合成できる N→C 逆伸長法を実現した。さらに、回収・再利用可能な新規添加剤を開発し、エピメリ化を大幅に抑制することに成功した。従来のC→N 法に比べ、保護基や縮合剤由来の廃棄物を大幅に削減し、安価な原料を活用できるため、環境負荷と製造コストを同時に低減できる。また、生理活性ペプチドのスケールアップ合成にも展開し、同プロセスの実用可能性を示した。

    逆伸長法は従来法と比べ、低価格原料・低廃棄物・ブロック連結で効率化している

    多分野に展開

     今後は大学や企業との共同研究やスタートアップ設立を通じて、持続可能なペプチド量産法の新標準を確立したい。創薬のスピードとアクセス性を高めるとともに、食品・農薬・化粧品・材料などの非医薬分野へもペプチド製品を普及させ、社会の健康・安全・環境持続性に広く貢献したい。

    工学計測標準研究部門
    環境 ・ 生体調和化学研究グループ
    研究グループ長

    生長 幸之助

    OISAKI Kounosuke

    生長 幸之助研究グループ長の写真

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