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光応答バイオポリマー

光応答バイオポリマー

2026/06/18

光応答バイオポリマー 細胞を自在に操作・制御

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    「培養」に注目

     医薬品の製造から移植医療、さらには薬物の作用や有効性、安全性を確かめることを目的として、培養細胞を利活用する動きが進んでいる。令和3年に厚生労働省がまとめた「再生医療等安全性確保法の施行状況」によれば、細胞培養加工施設(CPC)の総数は3,000を越え、特定細胞加工物等製造施設と呼ばれるCPCの数も67に上る。医薬品開発においては、ヒト細胞を治療薬とする技術が実用化される一方で、培養細胞からなるヒト臓器モデルを駆使し、動物実験を超える精度で新規医薬品を探索する新たな動き(NAMs)が、国内外で活発になっている。

    IT親和性も

     産業技術総合研究所(産総研)では、培養細胞をさらに大量に利用する時代の到来に対応すべく、細胞操作の自動化や多様化のニーズに応える有望な手だてとして、光照射に応答して機能を発現するバイオポリマーの技術開発を進めてきた。光は透明な光路を介して閉鎖系の内部に遠隔的にかつ局所的に作用させられるため、細胞培養系の無菌操作に好適でIT親和性も高い。

     これまでに光照射により水溶化したり酸や熱を発生したりするポリマー材料を開発、基材上の培養細胞を選択的に回収または除去できることを実証した。さらに精密レーザー照射を組み合わせ、顕微鏡画像からAI(人工知能)が細胞を瞬時に見分けて高速に純化する技術を企業と共同で開発した。25年には、人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の心筋細胞をこの技術を駆使して純化することで、ヒトの心臓に忠実なアッセイ系が構築できることを、米国の研究グループが報告している。

    光応答ポリマーが開くオンデマンド細胞制御の図

    瞬時にゲル化

     また最近、水溶液への光照射によって速やかに、強くしなやかなハイドロゲルを生成するポリマー材料を新たに開発した。このポリマーを0.3-1%の濃度で溶解させた培養液に細胞を分散し、光照射を行ってゲル化させても、細胞はダメージを受けることなくゲルに閉じ込められ、そのまま増殖して巨大な細胞組織体を形成することが確認された。さらにゲルの溶解による細胞の取り出しや、ハイドロゲル表面への細胞接着などが可能になり、細胞の3次元培養や3Dプリンティングをはじめとする次世代細胞プロセシングへの応用検討が始まっている。

    細胞分子工学研究部門
    細胞制御マテリアル研究グループ
    上級主任研究員

    須丸 公雄

    SUMARU Kimio

    須丸 公雄上級主任研究員

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