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データ分散で信頼確保

データ分散で信頼確保

2026/04/23

データ分散で信頼確保 協調的な秘密計算構築

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    リスク顕在化

     クラウドやAI(人工知能)の進展により、膨大なデータが活用されている。その多くは信頼できる中央サーバーに集約されて処理されてきた。しかし、個人情報や企業機密が中央に一元的に集約される構造は、プライバシー漏えいや不正利用のリスクを抱えており、「信頼を中央に置く」モデルの脆さが顕在化しつつある。こうした課題を背景に、分散によって信頼を築く計算基盤が求められている。

     課題解決の有力な手段として注目されているのが秘密計算である。秘密計算は、入力データを開示することなく計算を進め、必要な結果のみを得られる暗号技術である。産業技術総合研究所は大学と連携し、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のCREST研究課題「サステナブルな分散型秘密計算基盤」に取り組んでいる。

    ゼロトラスト

     中央サーバーに依存しない手法として、信頼できる少数サーバー間で秘密計算を行う方式も提案されてきたが、特定主体への信頼を前提とする設計である。本研究はさらに一歩進み、特定の管理主体に依存しない分散型の枠組みを目指す。参加者が対等に計算を担う設計により、「Must trust」から、互いの信頼関係に依存せず常に検証することで安全性を確保する「Zero trust」へと発想を転換する。ユーザー同士がオープンな分散環境で協調的に秘密計算を行う基盤の構築を目指している。

    ユーザー同士の分散型秘密計算基盤の図

    持続運用目指す

     分散によって信頼を担保する思想はブロックチェーン(分散型台帳)技術とも共通するが、同技術が主に取引の正当性や改ざん耐性を確保するのに対し、本研究は計算そのものを秘匿したまま成立させる点に焦点を置く。技術の核は、暗号学的安全性と形式的検証による機能の正当性を両立した分散設計である。さらに、ユーザーが計算リソースを提供して報酬を得るインセンティブ機構を組み込み、持続的に動作する自律分散型の運用モデルを検討している。理論的基盤と制度設計の両面から支えられた本基盤は、分散環境における新しい信頼の枠組みを提示するものである。

     本研究は2022年10月に開始され、約5年半の計画で推進している。分散環境における秘密計算の基礎理論と基盤技術を確立し、信頼を中央に置かないデータ活用の社会基盤の実現を目指している。

    サイバーフィジカルセキュリティ研究部門
    セキュアプラットフォーム研究グループ
    研究グループ長

    ATTRAPADUNG Nuttapong

    ATTRAPADUNG Nuttapong研究グループ長

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