変革につながるアイデアは、きっと研究の最前線にある。日本最大級の公的研究機関・産総研の公式ウェブマガジン。

構造物の安全支える

構造物の安全支える

2026/03/12

構造物の安全支える 重りの運動を精密計測

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    力の国家標準

     建築物や輸送機械などに使われる構造材料の強さは、社会の安全安心を支える重要な指標である。その値は材料にどれだけの力を加えたら変形や破壊に至るかを試験することで得られ、そのときに加えた力を正確にはかることが強さを正確に評価することに繋がるため、力の計測は産業の基盤として重視されている。材料試験機は国家計量標準までさかのぼれるトレーサビリティ制度(JCSS制度)の対象となっており、計量法に基づき産業技術総合研究所(産総研)において力の国家計量標準を維持している。

    証明書1万件超

     JCSS制度に基づき国内で発行される力の校正証明書は、2024年度には約一万四千件に上り、幅広い産業で活用されている。力の発生原理は多岐にわたるが、実用的な力の国家標準は精密に質量調整された重りに働く重力を基準とする実荷重式と呼ばれる方式である。産総研では、大きなものでは1枚約5トンの重りを連ねた標準機の他、さらに大きな力を発生させる増幅機構を備えた標準機も保有している。また小さなものでは1枚約10グラムの重りを備えた標準機や、コイルを利用した小さな力の発生装置も開発している。

    総計約55トンの5トン連結吊りの写真

    時間変化する力

     計測器に重りを静かに載せて作用する重力は、時間によらずほぼ一定である。現在トレーサビリティ制度の対象として校正が可能なのは、このような時間変化しない力である。しかし現実には、衝突現象のように瞬間的に作用する力や、振動現象のように増減を繰り返す力など、時間経過によって変化する力も作用している。

     力の計測器には、時間変化する力に対する応答が、時間変化しない力に対するそれとは異なる場合があるため、時間変化する力による計測器の校正需要が高まっている。このような力の基準として、重りの運動を精密に観測することにより、重りが動きを変えたときに働く力を計算する方式を開発している。レーザーによる非接触計測により、衝突または振動する重りの位置を高速に計測するのだが、重りの衝突や振動の挙動が理想的ではないため困難さがある。産総研では、複数のレーザーを用いた多次元的な計測や、レーザービームの走査による広範囲の計測により、計測・校正の高度化を図っている。

    工学計測標準研究部門
    力トルク標準研究グループ
    主任研究員

    林 敏行

    HAYASHI Toshiyuki

    林 敏行主任研究員の写真

    この記事へのリアクション

    •  

    •  

    •  

    この記事をシェア

    • Xでシェア
    • facebookでシェア
    • LINEでシェア

    掲載記事・産総研との連携・紹介技術・研究成果などにご興味をお持ちの方へ

    産総研マガジンでご紹介している事例や成果、トピックスは、産総研で行われている研究や連携成果の一部です。
    掲載記事に関するお問い合わせのほか、産総研の研究内容・技術サポート・連携・コラボレーションなどに興味をお持ちの方は、
    お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

    国立研究開発法人産業技術総合研究所

    Copyright © National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
    (Japan Corporate Number 7010005005425). All rights reserved.