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身体機能の低下防ぐ

身体機能の低下防ぐ

2026/02/05

身体機能の低下防ぐ 歩行を定量化、早期発見

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    糖尿病と相関

     サルコペニアとは、設定された診断基準よりも、骨格筋量の減少や筋力・身体機能の低下した状態を指す。加齢や栄養不足、疾患などが原因で発症する。2型糖尿病は、筋肉の代謝や機能に悪影響を及ぼしやすく、サルコペニアを発症するリスクが高い。反対に、サルコペニアを発症すると糖代謝がさらに悪化し、糖尿病自体の一層の重症化が懸念される。このため、糖尿病患者に対して、サルコペニアの早期発見と積極的な介入による症状の改善が重要とされている。しかし、従来の診断には、専門的な知識や高価な体組成装置が必要である。そこで、簡便かつ実用的な診断法が求められている。

    足首関節に着目

     産総研は、筋力や関節の状態は歩き方に直接現れることから、誰もが日常的に行う「歩行」に着目し、動きの特徴から身体機能の変化を読み解く研究を進めてきた。2型糖尿病の高齢患者を対象に、3次元動作解析装置を用いて、歩行速度や歩幅だけでなく、歩行中の関節の動きを定量化した(産総研・香川大学との共同研究)。その結果、サルコペニアを有する患者では、有さない患者と比較して足・足首関節の運動範囲の著しい減少や歩行速度の低下、歩幅の短縮が起きていることが明らかになった。

     注目すべきは、歩行速度とは無関係に、矢状面での足・足首関節の運動範囲の減少がサルコペニアを有する患者において有意に認められた点にある。足・足首関節の運動範囲が、デジタルバイオマーカーとして、糖尿病患者の身体機能の変化を客観的に捉える新たな指標となる可能性を示している。

    サルコペニアの有無による動作の違いを表した概要図

    希少データ蓄積

     国際的にサルコペニアに関する研究は進展している。しかし、関節運動の数値化データに基づいて、詳細な評価を行った例は少ない。本研究は、高齢の糖尿病患者を対象として得られた希少なデータに基づいており、世界的にも意義のある成果である。

     今後は、自宅や医療現場で、身近にあるスマートフォンや家庭用のセンサーなどを用いてデジタルバイオマーカーのデータを簡単に取得し、身体機能を推定・評価できる技術の構築と普及を目指す。この取り組みは、高齢化が進む社会において、医療・介護・ヘルスケアの幅広い領域で、身体機能の評価や医療の効率化に寄与すると期待される。

    セルフケア実装研究センター
    生体・運動機能研究チーム
    (兼務:健康医工学部門
    運動生理学・バイオメカニクス研究グループ)
    主任研究員

    土田 和可子

    TSUCHIDA Wakako

    土田 和可子主任研究員

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