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大学と連携、日本に“革新の生態系”

大学と連携、日本に“革新の生態系”

2026/01/19

大学と連携、日本に“革新の生態系” 社会実装へ研究の場提供

日刊工業新聞寄稿記事「講壇」

    産総研理事長 石村和彦による日刊工業新聞「講壇」への寄稿コラムです。産総研の経営方針やそれを受けた具体的なアクション、自身の経験やマネジメント論、社会・技術動向への考えなど、石村の視点から複数のトピックを取り上げています。
    ※記事の版権は日刊工業新聞社にあり、許諾を得て掲載しています。

    国研である産業技術総合研究所(産総研)と大学の連携は、日本のイノベーション・エコシステムの基盤である。連携のあり方を見直し続け、新たな価値を創り出していく。

    産総研には、量子技術の研究開発と実用化を担う量子・AI(人工知能)融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)がある。センター長には東京工業大学最後の学長、益一哉氏を迎えた。先日、益氏と話をして印象に残ったのが、「大学が産総研の設備や知見を積極的に活用することで、双方にとっての成長につながるのではないか。」という指摘だ。

    大学は産総研にとって、日本全体のイノベーション・エコシステムを形成していく上で重要なパートナーだ。産学官が一体となるには、産総研と大学が互いの強みを発揮することが不可欠である。

    一方で、日本全体では博士人材の不足と市場で求められる人材像とのミスマッチといった課題もある。大学には高い専門性を有する人材が数多く存在するが、産業界の需要と完全には合致していない。基礎研究や応用研究、社会実装という各段階、さらに材料、量子、AI、エネルギーなど、領域ごとに必要とされる人材像は異なり、その需給のずれをいかに埋めるかが、日本の研究力と産業競争力双方の強化に重要だ。

    益センター長(写真左)(写真右は石原理事長)
    「大学が産総研を活用することで双方の成長につながる」と指摘する
    益センター長(写真左)(写真右は石原理事長)

    産総研は2021年、研究成果を実際の製品やサービスにつなげる役割を踏まえ、研究リソースの配分を社会実装、応用、基礎研究について、それぞれ、3、5、2と明確にした。また、修士卒人材の採用拡充と、博士号取得支援制度の運用を開始し、企業のニーズを捉えた研究を産総研で実施しながら大学で博士号を取得できるようにした。設備の共用化のほか、実証やスケールアップを一貫して担うエンジニアリング人材も強化してきた。研究成果の社会実装において、大学でも不足しがちな工程設計や実装支援を手厚く実施している。

    これらは、大学とは異なる産総研の役割を明確化した上で大学や企業と連携し、素早く研究成果を社会実装するための仕組みづくりである。

    大学と産総研が連携することは企業にとっても魅力が大きい。産総研で対応しきれない部分を大学が担うことで、企業が抱える幅広いニーズに応えられるようになるからである。この時に活躍するのが、AIST Solutions(AISol)で、23年に産総研が社会実装を加速するために設立した100%子会社だ。AISolが企業やマーケットのニーズを捉えて、それに合致する産総研の技術だけでなく、大学の知見も合わせてマッチングできるようになると、産学官の連携をより迅速にイノベーションを生み出す形に変えていける。そのため、AISolでは、産総研の技術と企業の事業課題をつなぐ生成AI「Bibbidi」を提供する。今後、産総研と連携する大学の技術も取り込む予定だ。

    産総研は今、“非連続な成長”を目指している。これは大学や企業、産総研が強みを持ち寄り、多様な人材が多様な形で連携することで、従来の枠組みでは達成できなかったインパクトを社会にもたらすことだ。そのために、大学との連携のあり方を問い続け、最適な形で再設計し続けなくてはならない。大学と相互に知見や資源を活かし、ともに新たな価値を創り出す関係を発展させていきたい。

    理事長 兼 最高執行責任者

    石村 和彦

    ISHIMURA Kazuhiko

    石村和彦理事長の写真

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