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能登半島北東部で長期継続した群発地震と間欠的地震活動

能登半島北東部で長期継続した群発地震と間欠的地震活動

2026/08/12

能登半島北東部で長期継続した群発地震と間欠的地震活動

研究者の写真
    KeyPoint 「なぜ、同じ場所で地震活動が長く続くのか?」――その素朴な疑問に、活断層・火山研究部門 雨澤勇太研究員らが精緻な地震データ解析で答えました。能登半島北東端で4年以上続いた群発地震を高精度に解析し、地下深部から「間欠的」に押し出される高圧流体(地下水やガス)と、流体が広がりにくい「低透水性」の地質構造が重なると、地震活動が長寿命化することを明らかにしました

    研究の背景:群発地震が「長く続く」のは、地下で何が起きているからか?

     能登半島北東端では2018年から2万件を超える地震が集中して発生し、明確な本震がないまま群発地震が長期にわたって続きました。これまでの研究では、地下深部において高圧流体が移動すると、岩盤内の応力(物質内部に働く力)を変化させ、その変化の不均質性が群発地震の広がり方・持続時間に影響すると考えられてきました。しかし、高圧流体がどのように地殻内の透水性構造と結び付くと活動が「長寿命化」するのかを観測データに基づいて定量的かつ具体的に示すことは難題でした。 そこで雨澤らは気象庁・防災科学技術研究所・国立大学の地震観測記録から、地震波の到着時刻や波形相関を活用して得たデータを基に震源を精密に再決定した上で、群発地震を南(S)・西(W)・北(N)・北東(NE)の4クラスターに区分。この再決定震源をもとに群発地震の時間空間的な変化を精緻に解析した結果、Sクラスターの深部(10–20 km)で活動が始まり、W→N→NEへ段階的に発展したことを示しました。この深部発→周辺拡大という進展は、流体圧が時間差で周囲に伝わるこれまでの研究のイメージと整合します。

    得られた成果:高圧流体の供給と保持が重なると、群発地震は長寿命化する

     この研究における解析のポイントは二つあります。第一に、Sクラスター深部で数分〜数時間程度の地震活動の活発化が息継ぎのように繰り返し観測され、この地点が高圧流体の「間欠的な供給源」として機能していることです。第二に、W・N・NEの各クラスターでは、群発地震の時間・空間的に発展する様子が間隙流体圧(岩石の粒子間にある流体が持つ圧力)の拡散モデルでよく表され、得られた拡散係数は他の地域の群発地震と比較して中~低の値でした。この値は周辺の地殻が比較的「水を通しにくい(低透水性)」ため、一度上昇した流体圧が落ちにくく、群発地震が続きやすいことを意味します。以上から、Sクラスター深部の「高圧流体の間欠供給」× 群発地震域の「低透水性」という組み合わせが能登半島北東部で観測された群発地震の長寿命化の要因である、と結論付けられます。別研究で推定された地震波速度構造でもSクラスター直下に低速度域が報告され、本研究の解釈を支持しています。深い所から時々「押し出される水」が、周りの「水はけの悪い岩」に入り込み、高い圧力が長く続く――だから群発地震も長く続く、ということです。

    今後の展望:見える化・予測・一般化――防災と学術の両輪で前進

     この研究は、地下の高圧流体が「どこから」「どのくらいの頻度で」「どこに溜まりやすいか」という地下の「水の通り道」を地震データから推定する道筋を示しました。今後は、地殻変動や温泉・地下水の化学組成など異分野データとの統合により、地下深部からの高圧流体の供給タイミングや滞留域の可視化を進めます。これにより、重点観測計画の策定・避難計画の見直しなど、実務の意思決定を支援できます。 さらに本研究のアプローチは、火山域や地熱開発などで発生する世界各地の群発地震に適用可能です。いまだ謎の多い群発地震という現象の発生—継続—終息を説明するモデルの構築に向け、国際共同研究の展開が期待されます。


    Yuta Amezawa, Yoshiya Hiramatsu, Akumu Miyakawa, Koji Imanishi, Masato Otsubo
    Long‑Living Earthquake Swarm and Intermittent Seismicity in the Northeastern Tip of the Noto Peninsula, Japan
    Geophysical Research Letters, 50(8), e2022GL102670 (2023).
    https://doi.org/10.1029/2022GL102670

    活断層・火山研究部門
    地質変動研究グループ
    研究員

    雨澤 勇太

    Amezawa Yuta

    雨澤研究員の写真
    産総研
    地質調査総合センター
    活断層・火山研究部門

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