産総研マガジンは、企業、大学、研究機関などの皆さまと産総研をつなぎ、 時代を切り拓く先端情報を紹介するコミュニケーション・マガジンです。

話題の〇〇を解説

マルチマテリアルとは?

2023/05/10

#話題の〇〇を解説

マルチマテリアル

とは?

―異種材料の組み合わせで機能性を向上―

科学の目でみる、
社会が注目する本当の理由

  • #エネルギー環境制約対応
30秒で解説すると・・・

マルチマテリアルとは?

マルチマテリアルとは、特性の異なる材料を適材適所で組み合わせたり複合化したりすることによって生み出される材料・部材のことで、ひとつの材料では実現できない「総合的に優れた特性」を持たせることができます。例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は炭素繊維とプラスチックを混ぜてつくった材料で、繊維強化プラスチックのひとつです。自動車のボディーを軽量化するために使われていますが、コストが高く一部の高級車などでしか使われていないという課題があります。この課題を克服できるひとつの解が、マルチマテリアルです。アルミニウムとCFRPを組み合わせて「マルチマテリアル化」することで、軽量化とコスト削減の両立が可能となります。このように、金属やプラスチック、セラミックス、複合材料などの材料を適材適所に組み合わせて性能の向上をはかる、新たな性能を持たせる技術がマルチマテリアル化技術であると考えています。

特性の異なる材料を適材適所で組み合わせたり、複合化したりすることによって、単⼀材料では不可能な「総合的に優れた特性」をもつ材料・部材を⽣み出すことを「マルチマテリアル化」だと産総研では考えています。マルチマテリアル化は、材料の数だけ組み合わせの可能性が広がります。一見単純そうな「異種の材料同士を接着・接合する」ことでさえ、いまだ多くの課題を抱えていますが、徐々に実用化も見えてきています。未来の素材と期待されているマルチマテリアル部材が実際に社会で使われるためには、材料そのものの高機能化、接着・接合技術の確立、生み出されたマルチマテリアル部材の評価技術、将来を見据えたリサイクルなど、多角的な研究開発が必要です。マルチマテリアル開発の現状や今後の研究開発の方向性などについて、マルチマテリアル研究部門の堀田裕司に聞きました。

Contents

マルチマテリアルとは

(1)実は身近なマルチマテリアル

 自動車や建築物、家電製品、電子機器と世の中のありとあらゆるものには、それを構成するさまざまな素材が用いられています。例えば、金属、プラスチック、セラミックス、木材などの材料は、求められる用途に応じて、それぞれの素材の物性の改良や最適化を図ることで機能の高度化に対応してきました。ほかにも、炭素繊維などの強化繊維や高熱伝導セラミックス粉体などの機能性フィラーをポリマーと複合化させた複合材料(コンポジット材料)もあります。

 金属やプラスチック、セラミックス、複合材料などの材料を適材適所に組み合わせて性能の向上をはかる、新たな性能を持たせる技術がマルチマテリアル化技術であると考えています。

 マルチマテリアルはとても身近なものであり、釣りざおやテニスのラケット、ゴルフクラブなどにも使われています。例えばゴルフクラブでは、チタンのような金属と炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が接着されています。改良することで毎年のように飛距離や性能を向上させた新製品が登場しています。また、福祉の分野では、マルチマテリアルによる車イスの軽量化で、介護する人の負担を減らしたり、介護される人の安全性を向上させたりすることができます。マルチマテリアル化により、機能を高めるだけでなく、快適さを提供したり、信頼性のある材料・部材として安全・安心につなげたりすることができるのです。

図
マルチマテリアルの概要図

(2)自動車開発で進むマルチマテリアルの導入

 将来的にマルチマテリアル化が進む分野として挙げられるのが自動車業界です。CO2排出削減を目的に、ハイブリッド自動車や電気自動車、プラグインハイブリッド自動車といった自動車の開発がされていますが、車体の軽量化はエンジン車のときから長年続いている課題です。ボディーなど車体の大きな部分に使用されるスチールを、添加成分や組織構造を工夫した高張力鋼(ハイテン鋼)板に変えることで、強度はそのままに厚みを薄くすることができ、軽量化がはかられています。ほかにも、比重がスチールの3分の1と軽いアルミニウムも古くから軽量素材として使用され、フルアルミボディーを採用する特殊な自動車だけでなく、最近では一般の市販車でもドアやルーフパネルやフロントフードなどに軽量化のためにアルミニウム合金が使用されています。さらにアルミニウム合金とCFRP、アルミニウム合金とマグネシウム合金を組み合わせたマルチマテリアル部材の開発が期待されています。

 また、水素を燃料とする燃料電池自動車では、爆発しやすい水素の漏出を防ぐために金属ではなく樹脂製の水素タンクを搭載しています。CFRPとGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)、プラスチックの3層構造を採用していて、万が一の衝突事故などでも、タンクが破壊され危険な水素が漏れるのを防ぐ構造がマルチマテリアル化により実現されています。

写真
NEDO革新的新構造材料等研究開発プロジェクトにおける、車体のマルチマテリアル研究開発例(産総研中部センター)

マルチマテリアルの現状と課題

 未来の素材と期待されているマルチマテリアル部材が実際に社会で使われるためには、構成する材料そのものの高機能化や信頼性向上、接着・接合技術の確立、生み出されたマルチマテリアル部材の評価技術、将来を見据えたリサイクル技術の構築など、多角的な研究開発が求められています。特に、リサイクルによる資源循環を前提とした材料開発、プロセス開発は、カーボンニュートラルの観点からも必須です。

 産総研では、さまざまなマルチマテリアルとして利用されて、大量のスクラップが発生すると予想されているアルミニウム合金を、スクラップ材から高純度なアルミニウム合金にリサイクル可能にする技術開発を進めています。

 他にも、軽量金属のマグネシウム合金板とアルミニウム合金板を、「ヘミング加工(折り曲げ加工)」で接合して異種金属のマルチマテリアルをつくるための、易成形性のマグネシウム合金の開発に取り組んできました。こうしてできた素材を建材や自動車のマルチマテリアル部材として利用した場合、廃棄する際にそれぞれの金属を分離することが可能になります。こうすることで、簡易にそれぞれをリサイクルすることが可能になるのです。

 材料の数だけ生み出される可能性のあるマルチマテリアルは、開発するだけでなく社会で使ってもらわなければ意味がありません。産総研では、材料の高機能化の追究、接着・接合技術の向上だけでなく、安心して使える材料・部材であるかの評価技術の開発も行っています。これまでの研究開発で培ってきたデータを活用しつつ、産総研がハブとなってマルチマテリアルの開発を担っていきたいと考えています。

この記事へのリアクション

  •  

  •  

  •  

この記事をシェア

  • Twitterでシェア
  • facebookでシェア
  • LINEでシェア

掲載記事・産総研との連携・紹介技術・研究成果など にご興味をお持ちの方へ

産総研マガジンでご紹介している事例や成果、トピックスは、産総研で行われている研究や連携成果の一部です。
掲載記事に関するお問い合わせのほか、産総研の研究内容・技術サポート・連携・コラボレーションなどに興味をお持ちの方は、下記の連絡先へお気軽にご連絡ください。

産総研マガジン総合問い合わせ窓口

メール:M-aist_magazine-ml*aist.go.jp(*を@に変更して送信してください)

国立研究開発法人産業技術総合研究所

Copyright © National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
(Japan Corporate Number 7010005005425). All rights reserved.