RXとは?
RXとは?

2026/05/20
RX(ロボットトランスフォーメーション)
とは?
科学の目で見る、
社会が注目する本当の理由
RX(ロボットトランスフォーメーション)とは
「Robot Transformation」の略。業務上において人工知能(AI)やICT(Information and Communication Technology)、ロボットを活用する際にDX(Digital Transformation)の取り組みと連動させ、経営視点から事業全体を捉えることで、業務プロセスそのものを変革する取り組みです。人とロボットの役割分担や業務構造を再設計し、その中にロボットシステムを位置づけます。AIやICT、ロボットの活用を既定路線とせずに事業の変革を目的とする点で、ロボットの導入を目的としたロボタイゼーション(Robotization)や、その延長線上でロボット前提の社会像を描くロボタライゼーション(Robotalization)とは異なります。
少子高齢化の進む日本では、生産年齢人口の大幅な減少という社会課題の解決に向けて、ロボットの活用が期待されています。そのためには、業務プロセスの一部の作業の代替としてのロボット導入だけでなく、事業全体のDXにロボットシステムを位置づけて再設計するRXの推進が必要です。「人」が主役となるものづくり革新を掲げる産学官協働プラットフォーム「HCMIコンソーシアム」を運営し、RX推進人材の育成に取り組む谷川民生運営委員長、澤田浩之運営委員、岩井匡代事務局長にRXの考え方と今後の展望について聞きました。
RX(Robot Transformation)とは
RXの定義
「RX」とは、AIやICT、ロボットを活用してDXをフィジカル領域まで展開し、事業を変革することです。ロボタイゼーションやロボタライゼーションのように、ロボット導入ありきのアプローチではなく、「DX+R(ロボットシステム)」で全体を再構築するという、経営視点から全体を捉えるアプローチです。RPA(Robotic Process Automation)やAIの導入、データの活用の推進といったサイバー空間のDXの取り組みに、フィジカル空間のロボットシステムを併せて設計していきます。
DXの取り組みにフィジカル空間のロボットシステムを合わせて設計
RXが期待されている背景
生産年齢人口の大幅な減少という社会課題への対策として、業界によっては一定程度、作業のロボット化が進んできました。製造業の現場で加工や組み立てを担うロボットや、飲食業のレストランで配膳を担うロボットなどは多く見かけるようになっています。ただ、限られたエリアでのロボット化、省人化にとどまるケースが多く、そのロボットから得られるデータを活用してほかの業務の改善にもつなげる発想にはなかなか至っていません。
また、画一的なロボットの使い方ではなく、多品種少量市場で柔軟な作業ができるロボットを現場が求めるようになり、ユーザー企業がロボットの要求仕様を明示することも難しくなっています。業務プロセス内の部分的なロボット化ではなく、経営視点で事業全体を見て、DXをRXへ拡充するアプローチが必要になっているのです。
今後、進展が見込まれる領域、社会への影響
すでに業務プロセスの一部にロボットを導入している企業では、業務部門を越えたデータ連携が進展していくでしょう。例えば物流企業が倉庫内で仕分け作業をロボット化している場合、そこで得られるデータをトラックの配送システムにも連携し、ビジネス全体を効率化できるようになります。RXの考え方は部門を越えたデータ連携を進展させていくでしょう。ロボットを導入する価値を、より大きな経営視点で評価できるようになるのです。
農業などの第一次産業でもRXは進められるでしょう。例えばドローンで農薬を噴霧すれば、ドローンの位置や農薬の噴霧量がデータとして残るため、そのデータを活用することで、エビデンスのある価値創出ができます。
また、洋上風力発電所の保守など、人が行うのは危険な海洋での保守業務もロボットに任せていくことが見込まれます。その場合も作業を代わりに行うだけでなく、海域のデータを収集することで新しい価値を生む可能性が広がります。このように単なるロボタイゼーションとは異なり、データの収集・連携・活用を含めたロボットシステムが社会に実装されていくと見込んでいます。
ロボットからのデータを活用したさらなる効率化・価値創出が実現(イメージ図)
RX導入面での課題
あるひとつの部分的な工程に対する産業ロボットの専門人材はいても、経営戦略や生産戦略にAIやICT、ロボットを取り入れ、業務システム全体に活用した上で戦術へと展開できる人材は少ないのが現状です。経営視点でどのようにRXを進めるか戦略を考え、設計できる人材の育成が急務です。
そこで、NEDOプロジェクトを核とした人材育成・産学連携などの総合的展開の一環として、「高度ロボット活用人材育成講座(RX推進人材・高度ロボットSIエンジニア育成事業)」のRX推進人材育成講座が行われています。生産工学の知識をもとに、投資対効果を吟味してRXの導入戦略を検討でき、さらにAIやICT、ロボットの活用を踏まえた施策要求仕様を策定できる能力を育むプログラムを構築しています。経営戦略を最適な戦術に設計する力を育成し、「RX推進人材」として認定していく計画です。
生産技術部門のエンジニア、ロボット実装の経験があるロボットSIerやロボット導入コンサルタント、DX推進で培われた業務分析力を持つIT SIerなどが、RX推進人材を目指し、自身の専門領域を超えて学び始めています。
RX推進人材育成講座の講座構成
産総研の挑戦
産総研におけるRXの取り組み
産総研では2019年に産学官協働プラットフォームとして「HCMIコンソーシアム」を発足させ、ものづくりを革新する技術の確立や社会実装の推進をしてきました。技術をつくるだけでなく、技術を使う人を育成することも重視し、人材育成にも力を入れています。このコンソーシアムが、NEDOの「RX推進人材育成講座」のカリキュラムの作成、講座の運営も担ってきました。
カリキュラムでは、まずIAF(Industrial Automation Forum)で開発を進めているSMKL(Smart Manufacturing Kaizen Level)という評価指標を用いて、現状と改善ターゲット、投資対効果を見極める力を身につけます。自分たちがどこにいて、どこを目指すのか、それにどれだけお金がかかるのか。現場と経営で乖離しがちな認識を合わせて合意形成できるもので、RX推進の前提として重視しています。
もともとは製造業向けに開発された評価指標ですが、ほかの産業領域にも有効なものとして注目されており、工業系以外の産業団体とも連携し、独自のRX人材育成プログラムの企画も始まっています。
スマート製造みえる化の評価指標SMKL(Smart Manufacturing Kaizen Level)を活用
(IAFウェブサイトより引用)
今後の展望
今後もHCMIコンソーシアムではRX推進人材育成カリキュラムの体系化、仕組みづくりを進めます。
地場産業のある地域、自治体とも連携し、地場の中小企業が参画してRXが根づいていくモデル地域をつくることも目指しています。まずは私たち産総研をテストベッドにして、つくば、北海道、臨海、関西、九州といった産総研の各拠点でRXを推進し、ロボットシステムが日常的に動いている拠点にしたいと考えています。
より体系化した育成プログラムの仕組みをつくり、受講した多くの修了者が全国で活躍することで、生産年齢人口の減少という社会課題を克服します。さらに新たな価値の創造にもチャレンジし、取り組みを牽引するRX推進人材の活動基盤を作ることが目標です。
全国各地でRX推進人材を育成