変革につながるアイデアは、きっと研究の最前線にある。日本最大級の公的研究機関・産総研の公式ウェブマガジン。

リモートセンシングとは?

リモートセンシングとは?

2026/02/25

#話題の〇〇を解説

リモートセンシング

とは?

科学の目でみる、
社会が注目する本当の理由

    30秒で解説すると・・・

    リモートセンシングとは

    「遠隔探知」「遠隔観測」を行う技術のこと。離れたところから対象に触れることなく情報収集する一連の技術です。偵察衛星に搭載する軍事技術として発展し、その後科学・環境観測への展開を通じて、現在は産業を含むさまざまな領域で活用されています。カメラ・センサーの開発、データ解析、データの校正・検証といった技術が含まれます。

    衛星、航空機、ドローン、高所の定点カメラなど、離れたところから画像などのデータを取得する一連の技術がリモートセンシング技術です。資源開発、防災、環境モニタリング、惑星探査など、さまざまな用途と組み合わせられ、現代社会になくてはならないものとなり、今後の宇宙利用にも欠かせない技術として注目されています。こうした広がりの中、成果普及や次世代を担う学生に向けた講演などアウトリーチ活動にも力を入れている、地質調査総合センター地質情報研究部門リモートセンシング研究グループの山本聡研究グループ長に、技術の現在地とビジョンを聞きました。

    Contents

    リモートセンシングとは

    リモートセンシングの定義

     リモートセンシングとは、「遠方から、非接触で、主に電磁波を使って情報収集する」一連の技術のことです。日本語では「遠隔探知」「遠隔観測」などと訳されます。もともと軍事目的で技術開発が進んできたため、人工衛星からの地球の画像撮影ばかりが例として挙げられがちですが、それだけではありません。顕微鏡でのミクロの世界の観察や、街に設置された高所カメラ、自動車のドライブレコーダー、ドローンでの撮影、航空機やヘリコプター、地球を周回する衛星からの地球観測、そして天文台の望遠鏡や宇宙望遠鏡、惑星探査機での天体観測もすべてリモートセンシングです。

     離れたところから対象に触れることなく情報収集するという意味では、人間の目もリモートセンシングといえます。つまり、人間の視覚を空間的スケールで拡張したり、可視光以外の波長スケールまで拡張し、さまざまな情報を引き出したりすることがリモートセンシングといえるでしょう。より広義には、音波を使った聴覚的な情報収集や、気体分子による嗅覚的な情報収集も含まれます。

    注目されている理由

     今やリモートセンシング技術は、さまざまな研究開発、地図情報サービス、防災、資源開発など多くの領域で活用されています。もともとは高額な設備を必要とし、政府や研究機関だけが使う特別な技術でしたが、近年、カメラやセンサーを安価で入手できるようになり、政府や研究機関が衛星データを無料で公開するようにもなったことで、技術の活用が民間にも広がりました。Googleマップのような地図アプリの使用が日常的になり、ドローンによる上空からの撮影も一般的になったことで、リモートセンシングは普段の生活にも溶け込んでいます。

     さらに地球観測と並んで、宇宙利用においてもリモートセンシング技術が活用されています。月や他の惑星もリモートセンシングの対象であり、日本やアメリカ、ロシア、中国、ヨーロッパ、UAE、インドなど、さまざまな国が宇宙環境でのリモートセンシングを活発に進めています。例えば、惑星探査機を火星に着陸させ、ローバーやドローンにカメラやセンサーを搭載して火星を観測する取り組みも進んでいます。

    リモートセンシング技術の進展

    センシングに用いる機材

     センシングで使うカメラには、単一の波長で画像を取得し、宇宙空間から地上の人やモノまで捉える空間分解能を発揮する「パンクロカメラ」、複数の波長で画像を取得する「マルチバンドカメラ」、数十から数百に及ぶ連続波長でスペクトルデータを取得する「ハイパースペクトルカメラ」があります。ハイパースペクトルカメラは、近赤外線の波長を用いて鉱物の種類や組成を捉えることができ、2020年頃から商用衛星にも搭載され始めています。

    データ解析

     取得した画像分類や、地上にあるモノの形状把握は、機械学習やAIによる判読が盛んに行われるようになりました。ただ、リモートセンシングのデータには対象物からの情報だけでなく、例えば大気の影響や、衛星やセンサーに起因するさまざまな誤差情報が含まれ、現段階ではAIがノイズを拾って誤判定することが多く、正しく解釈するには対象物に対する複数の専門知識を融合して人間が解釈する必要があります。

    データの校正・検証

     リモートセンシングは、データを取得して終わりではなく、そのデータを信頼できるようにする校正(キャリブレーション)、検証(バリデーション)が重要です。ハイパースペクトルカメラで取得した分光データの品質が悪ければ、対象物の解釈が大きく変わってしまいます。異なる衛星画像を組み合わせて解釈するには、まだ標準化されていないデータを補正し、組み合わせられる状態にする必要があります。ドローンでは揺れによってスペクトルデータが大きく乱れるため、姿勢制御や補正によって校正・検証する必要があります。データの品質管理は大きな課題です。

    産総研の挑戦

    産総研における研究開発

     産総研では衛星データとAIを使った技術開発や、地質学や環境学を結びつけた価値創出など、さまざまな角度からリモートセンシングに関する研究に取り組んでいます。リモートセンシング研究グループでは、月探査やはやぶさプロジェクトに関わった研究員や、ハイパースペクトルカメラの開発に携わってきたメンバーが分光学・地質学・環境学を駆使し、さらに産総研内の他分野の専門家と連携しながら、リモートセンシング技術を組み合わせて新しい価値を創出する技術開発を行っています。これらの技術や知見の融合は、多様な研究分野をバックグラウンドに持つ研究者が集まった、産総研の強みです。

     天然水素探索のための研究開発や、衛星データの品質向上のためのデータ補正、定点モニタリングを活用した精密農業*1の技術開発など、産総研内だけでなく民間企業との共同研究も進んでいます。

    今後の展望

     顕微鏡によるミクロスケールの観察から、ドローン搭載ハイパースペクトルセンサーによる探索的観測、そして宇宙からの地球観測といった、さまざまなスケールの情報を融合することで、新しいリモートセンシング技術を開発することを目指しています。また、日本が官民ともに力を注ぎ始めた月の資源開発にも、私たちのリモートセンシング技術は期待されています(2025/03/17プレスリリース)。誰もが利用できる宇宙空間を作り出すことで、日本の宇宙産業の発展に寄与していきたいと考えています。

    地質標本館特別展のお知らせ

    地質標本館 特別展「空間と波長で広がる地質学 -リモートセンシング-」
    皆さんが目で見る「地球:地質」、実は限られたスケール(世界)でしかとらえられていません。リモートセンシングは、その世界を大きく広げてくれる道具です。本展示では、空間と波長という二つの軸を通じて、リモートセンシングが広げてくれる地質の世界をご紹介します。会期中の4月18日には講演会も開催します。乞うご期待!

    会期:2026年2月25日(水)~6月28日(日)
    会場:地質標本館1階ホール
    時間:9時30分~16時30分
    休館日:毎週月曜日(休日の場合は翌平日)
    主催:国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター

    特別展のポスター
    ポスターをクリックすると特別展のサイトにジャンプします

    *1:センサーや衛星データを活用して農地管理を最適化する農業[参照元へ戻る]

    この記事へのリアクション

    •  

    •  

    •  

    この記事をシェア

    • Xでシェア
    • facebookでシェア
    • LINEでシェア

    掲載記事・産総研との連携・紹介技術・研究成果などにご興味をお持ちの方へ

    産総研マガジンでご紹介している事例や成果、トピックスは、産総研で行われている研究や連携成果の一部です。
    掲載記事に関するお問い合わせのほか、産総研の研究内容・技術サポート・連携・コラボレーションなどに興味をお持ちの方は、
    お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

    国立研究開発法人産業技術総合研究所

    Copyright © National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
    (Japan Corporate Number 7010005005425). All rights reserved.