変革につながるアイデアは、きっと研究の最前線にある。日本最大級の公的研究機関・産総研の公式ウェブマガジン。

臨海平野全域を捉えた世界最高精度の地質地盤情報整備

臨海平野全域を捉えた世界最高精度の地質地盤情報整備

2026/03/19

臨海平野全域を捉えた世界最高精度の地質地盤情報整備多摩川平野の堆積モデル

研究者の写真
    KeyPoint 都市の安全を守る上で、地盤に関する正確な情報は欠かせません。地質情報研究部門 田邉晋上級主任研究員らの研究チームは、東京湾沿岸の沖積層、中でも軟弱層の分布構造を詳細に解析し、その科学的特性を明らかにしました。膨大なボーリングデータと年代測定結果を組み合わせることで、世界最高水準の精度で堆積モデルを構築した点が評価され、この成果は、防災計画や都市開発に貢献する基盤情報として、自治体や建設業界での活用が進んでいます。

    研究の背景:都市の安全と産業を守るために

     日本の主要都市の多くは沖積平野に立地し、国土の13 %に過ぎないこの地域に人口の48 %が集中しています。しかし、その地盤は地震に弱いほか、液状化や地盤沈下などのリスクを抱えています。特に臨海部では軟弱地盤に起因するさまざまな災害が頻発しており、防災や都市計画にとって大きな課題です。こうしたリスクを減らすには、沖積層の分布構造を精密に把握し、産業立地や防災対策に活用できる地質情報として整備することが不可欠です。

    得られた成果:世界最高精度の地盤モデルを構築

     地質情報研究部門 田邉晋上級主任研究員らの研究チームは、2008年から全国の沿岸域で調査を進め、京浜工業地帯や羽田空港を含む首都圏の中核をなす多摩川平野に焦点を当て、世界最高水準の精度でデータ整備を行いました。今回の研究では、14本の基準コア、186点の年代測定結果、8745本のボーリングデータを解析し、多摩川平野全域を対象とした沖積層と軟弱層に特化した緻密な堆積モデルを構築しました。従来は平野下流域の情報に限られ、軟弱層の成因的な分布を特定するのは困難でした。しかし本研究により平野上流域を含めた世界最高精度のモデルが完成し、沖積層やそれを構成する軟弱層の分布が過去の地震被害や地盤沈下の発生域と一致することを解明しました。また本研究により、防災計画や都市開発に活用可能な科学的根拠を提示することができました。

    今後の展望:防災力強化と国際展開

     多摩川平野で構築した堆積モデルは国内だけでなく、世界各地の臨海平野にも応用が可能で、国際共同研究の基盤として期待されています。さらに本成果は特殊地質図としてウェブ公開され、インフラ分野で利用が進むなど、社会実装が始まっています。
     今後は他地域への展開を進め、沖積層アトラスの整備を拡充します。これにより軟弱層の普遍的な成因の解明のほか、地盤特性の分布把握、地質災害予測の精度向上が期待されます。国際的な展開としては、海外の大学などとの共同研究によって、各国の強みを生かした協力で地質災害リスクの低減と持続可能な都市開発を支える知的基盤の構築を進めています。
     この研究は、大量のデータ解析を通じて科学的知見を社会に還元し、日本の防災力強化と国際競争力の向上に貢献する取り組みです。今後も、より安全で持続可能な社会の実現に向けて、研究成果の積極的な活用を図っていきます。


    Transition from a transgressive to a regressive river-mouth sediment body in Tokyo Bay during the early Holocene: Sedimentary facies, geometry, and stacking pattern
    Susumu Tanabe, Rei Nakashima, Yoshiro Ishihara
    Sedimentary Geology 428 (2022) 106059
    https://doi.org/10.1016/j.sedgeo.2021.106059
    産総研:多摩川低地の地下に分布する「軟弱層」を可視化

    地質情報研究部門
    平野地質研究グループ
    上級主任研究員

    田邉 晋

    TANABE Susumu

    田邉 晋上級主任研究員の写真
    産総研
    地質調査総合センター
    地質情報研究部門

    この記事へのリアクション

    •  

    •  

    •  

    この記事をシェア

    • Xでシェア
    • facebookでシェア
    • LINEでシェア

    掲載記事・産総研との連携・紹介技術・研究成果などにご興味をお持ちの方へ

    産総研マガジンでご紹介している事例や成果、トピックスは、産総研で行われている研究や連携成果の一部です。
    掲載記事に関するお問い合わせのほか、産総研の研究内容・技術サポート・連携・コラボレーションなどに興味をお持ちの方は、
    お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

    国立研究開発法人産業技術総合研究所

    Copyright © National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
    (Japan Corporate Number 7010005005425). All rights reserved.