宇宙からの「手がかり」で
地下構造を明らかに
直接目にすることができない地下の様子を、様々な物理現象を手がかりに明らかにする。そんな「物理探査」という研究分野を初めて知ったのは、大学3年生で受けた講義がきっかけでした。見えないものが“見える”という不思議に興味をひかれ、4年生で物理探査の研究室を選択。今思えばこの選択が、今の産総研のキャリアまでつながることになります。
大学院在籍時に専攻していたのは、「ミュオグラフィ」と呼ばれる探査手法。例えるなら、巨大なレントゲン写真みたいなものですね。探査に使うのはX線ではなく、ミュオンという、宇宙から常に降り注いでいる素粒子(宇宙線)。ミュオンには物を通り抜ける性質があるのですが、密度が高いものほど通り抜けにくい。ということは、ミュオンがどれくらい通過できたのか測れば、その物体の密度が推定できるわけです。レントゲンで骨の位置がわかるように。
レントゲン写真と違うのは、X線を出すような装置を用意しなくてもよいこと。ミュオンは宇宙から常に降り注いでいるので、検出器だけ置けば計測が可能です。近年は火山や遺跡、原子炉内部の調査などに利用されるケースも。ただ、比較的新しい手法なので、私はこの手法の分解能や精度の評価をテーマとして研究をしていました。