“いい研究”ができるかどうかは、
自分が決める
顕微鏡をのぞいた時、その美しさにすっかり魅了されてしまったんです。まだ大学で何を専攻するか迷っていたころ。高分子を扱う研究室を見学した時のことでした。高分子とは、数千以上の原子が共有結合してできた巨大な分子のこと。ゴムやプラスチック、タンパク質などが高分子化合物ですね。それまで、高分子にはあまり興味がなかったのですが、顕微鏡で見てみると、六角形や三角形が並んだ構造がとてもきれいで……。「なんて美しいんだろう」と専攻を決めてから、現在に至るまでずっと高分子をはじめとするソフトマターをテーマに研究しています。
博士課程修了後、企業への就職は考えていませんでした。企業のいち研究者という立場ではなく、「研究者・武仲」として、個人の名前を出して研究がしたいと思ったんです。大学の講師や、公的研究機関の博士研究員を経て、募集を見つけたのが産総研でした。ただ、産総研に行くかどうかは、ぎりぎりまで悩みましたね。当時、私が携わっていたのは基礎研究。産総研は応用研究のイメージでしたから、自分がやりたい研究ができるのか不安で。そこで、大学で指導教官だった先生に相談したら、「 “いい研究”をしていれば大丈夫」と背中を押してくれて。“いい研究”になるかどうかは、周りの環境に関係なく、私の努力で決まるもの。なんだ、結局私が頑張ればいいだけか、と気が楽になって、産総研に入所することを決めました。