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事務系総合職×研究職対談

研究職と事務系総合職。
研究成果の社会実装に欠かせない、
互いの意志と想いに迫る。

PROFILE

事務系総合職
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宮下 東久
みやした はるひさAIST Solutionsプロデュース事業本部

2011年、新卒入所。文系学部卒。研究事務や人事を経て、現在のAIST Solutionsの前身となる部署にて、企業ニーズと産総研シーズのマッチング支援やコンサルティングに従事。現在はAIST Solutionsのプロデュース事業本部にて、産総研成果を活用した新たなビジネスやソリューションの立ち上げに取り組む。

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斎藤 葉月
さいとう はづきDEI人事部

2019年、新卒入所。理系修士卒。人事部採用担当、法務室で契約書チェック等の仕事に従事したのち、現在はDEI人事部にてエンゲージメント調査やダイバーシティ推進等の組織人事を担当している。

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松尾 駿介
まつお しゅんすけブランディング・広報部

2013年、新卒入所。文系学部卒。経理部、技術マーケティング室(現在のAIST Solutions)、2回の外部機関出向(経済産業省、芸能事務所)等を経て、ブランディング・広報部にて、産総研の広報ツール制作などに携わる。

研究職
猪股 邦宏さんの写真

猪股 邦宏
いのまた くにひろ量子・AI融合技術ビジネス開発
グローバル研究センター
(G-QuAT)
量子デバイス計測チーム

2016年、中途入所。大学院では高温超伝導体材料を用いた量子物理現象の観測に関する研究を行い、博士号取得後に別の公的研究機関を経て、産総研に入所。超伝導量子コンピュータに必須である極低温物理実験や、超伝導量子デバイスなどの研究開発に携わる。

渡邊 朋子さんの写真

渡邊 朋子
わたなべ ともこ生命工学領域
細胞分子工学研究部門
 
 

2018年、新卒入所。大学院では両生類の発生学研究を専攻し、博士号取得後に産総研に入所。ヒトの幹細胞をテーマに研究を進め、現在は幹細胞の分化制御や品質評価の技術開発に携わる。

1.

産総研に入ったきっかけ

興味の入口は、多種多様。

皆さん、今日はよろしくお願いします。まずは、産総研入所のきっかけについて、教えていただけますか。

斎藤さんの写真

斎藤

私は修士1年の時に参加した、産総研のインターンがきっかけです。大学院では食品系の学部で、生命科学の研究をしていました。周りは食品メーカーの研究開発職に就く人が多かったので、自分もそうなるだろうと思っていましたが、研究所の総合職という存在を知って、なんだか面白そうだなと。あとはその時の採用担当、宮下さんだったんですが、「すごい、なんだこの人は!」と思ったのを覚えています(笑)。

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宮下

当時は、総合職の魅力を伝えることを24時間考えていましたからね。インターンでも、学生に参加したことを絶対に後悔させないインターンを目指していました。僕が産総研に入った理由は、学生時代の研究者を目指した経験にあります。社会学がすごく好きで、社会学者になりたかったんですよ。一方で、社会学って面白いのに社会で全然使われてなくて。先生に「人文系の学問なんてそういうものだから」って言われて、「いや、そうか?」と思ってしまって。価値ある研究成果を社会に繋げられる仕事をしたいと思って、産総研の仕事を選びました。

宮下さんの写真
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松尾

僕は正直、何も意識せずに産総研を受けてしまったタイプです。2回就活しているんですよ。1回目はある会社から内定を頂いていたんですが、卒業の1ヵ月前に留年が決まり内定を辞退しました。そのあと、休学も経て、2回目の就活は違う業界を受けようかなと。ナビサイトでたまたま目についたのが産総研で、とりあえず応募したというのが正直なきっかけです。
僕の就活の軸は、クルマが好きとか、特定のサービスが好きだから、ということではなく、しっかりした商材がある組織で、その価値を高めていく仕事がやりたいなと思っていました。以前、芸能事務所に出向していたんですが、そこで言えば商材はタレント、産総研で言えば研究者や研究成果。産総研は商材がすごくしっかりしている組織で、その価値を高められるかもしれない、そんな仕事ができるという点で自分の軸に合っていて、産総研を選んで良かったなと思います。

渡邊さんの写真

渡邊

私は大学院時代に生命科学の発生学分野の研究をしていて、基礎研究を極めたい気持ちもありつつ、もっとその知見を生かした再生医療分野の応用研究をやってみたいと考えていました。世の中のニーズに応えられるような研究がしたいと思った時に産総研を知って、ぜひここで研究開発をしたいなと思いました。産総研では、研究室に閉じずに所内外の連携プロジェクトや企業との共同研究など、様々な角度で研究に関われることもすごく面白そうだなと感じました。

猪股さんの写真

猪股

僕は元々別の公的研究機関にいて、そこで超伝導量子ビットに関する研究を11年半していました。2015年頃に、産総研の知り合いから「研究職の公募に応募してみないか」と誘われて、2016年10月に産総研に着任しました。僕はちょうど2000年になる前の学部生の頃に、初めて「量子コンピュータ」という単語を聞き、その数年後、自分で考えた超伝導量子ビットに関連するテーマで博士論文を書き、2005年に博士号を取得しました。でもその頃は、超伝導量子の研究をやっているところは2拠点程度しかなかったんですね。そのうちの一つ、産総研ではない公的研究機関では、世界最先端の超伝導量子に関する研究をやっていたので、そこに入って知識や技術を磨きました。産総研に着任したのは、産総研でもいよいよ超伝導量子の研究を始めるというタイミングでした。

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2.

「研究所の総合職」「産総研の研究職」という仕事の役割について

組織の変革に関わる総合職と、
社会に求められる技術を創る研究職の互いの挑戦。

皆さん入所の経緯は様々ですね。総合職の皆さんに伺いたいのですが、産総研における「研究所の総合職」という役割や特徴について、ご自身ではどう理解されていますか?

斎藤さんの写真

斎藤

私は、働き方のイメージがつかなかったので、入る前にインターンに参加しました。それまで、研究職のサポートをするだけかなと思っていたのですが、かなり違いました。もちろん、サポートも大切ですが、組織全体を考えて、ハブになるのが総合職の役割だと感じますね。研究以外の部分を、いかに総合職が担えるか。研究者が研究にフォーカスできる土壌や風土を作っていくのが総合職の大事な仕事だと思います。

宮下さんの写真

宮下

働く上で、一般の企業よりも接点を持てる組織や業界が広いのは特徴ですね。例えば、同じ業界の競合企業さんそれぞれから相談を受けることもあれば、同じ業界の材料を作る人から商品を作る人まで、それぞれと連携することができる。技術の専門家についても、研究者はもちろん、有名な大学の先生に話を聞くこともできる。リーチできる範囲がすごく広いんです。それは、産総研の機能・役割と、今まで積み重ねてきた研究成果、社会からの信頼があるからなんだろうなと。
リーチできる範囲の広さで言えば、組織の中での話もそうで、初期配属からコーポレート(本部)に配属されるので、入所後すぐであっても組織全体の制度設計に関われて、広く俯瞰的に考えられるようになるのは産総研の総合職ならではですね。

松尾さんの写真

松尾

僕は斎藤さんと違って、産総研で働くイメージが固まる前に入所を決めたのですが、その当時の自分の身近でイメージできる仕事があったとしたら、大学の事務だったかなと思っていて。でも大学だと、研究・事務・連携は3つの職種に分かれているのが、産総研の総合職は組織運営も連携も含めてやっているので、仕事の幅が広いですね。

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就活生の頃と現在と、産総研への印象は変わられましたか?

宮下さんの写真

宮下

自分が持っていた印象と一番違いを感じたのは、研究者の方がしっかりリスペクトしてくれること。先ほどの大学との比較でいくと、大学では「先生」と呼んだりしますが、産総研ではお互いに「○○さん」と呼びます。すごくいいカルチャーだし、総合職としてはとてもやりやすいですね。

ありがとうございます。研究職のお二人に伺いたいのですが、「産総研の研究職」という役割について、ご自身でどう考えられていますか?

渡邊さんの写真

渡邊

産総研では社会のニーズのある新しい技術開発に取り組むことが求められていると感じます。そのためには自分の研究だけでなく、必要な連携を模索し、視野を広げて研究に取り組むことも重要だと感じています。そういった所内外の連携の場でも、総合職の皆さんが手厚くアシストしてくれます。そして、産総研の研究活動全体を俯瞰して取りまとめたうえで、変わりゆく社会の中でより良い組織をデザインしてくれていると感じます。一研究者としても、皆さんのサポートのおかげで研究活動に専念できる組織だなと。いい環境だなあ、と感じています。

猪股さんの写真

猪股

研究をしていい成果を発信するという意味では、大学や民間と役割は変わらないですね。でも産総研は、成果をいかに社会実装し、社会に送り出していくかを考えていく必要がある立場なので、そこが大学や民間企業の研究者と、産総研の研究者との大きな違いです。基礎研究を追求していた時は、その先の未知の領域を開拓するのが目的で、次の教科書に載るような研究成果をあげることしか考えていなかったなと思います。でも、その研究成果をいかに応用したら社会に送り出せるのかを考えるのが、産総研の研究者だと私は理解しています。今、まさに一生懸命頑張っているところです。

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3.

仕事のやりがい、モチベーションについて

組織や社会への貢献を通した、
一人ひとりの志。

皆さんのお仕事内容とご自身のモチベーションについて教えていただけますか?松尾さん、独特のキャリアと伺ったのですが、最初にお聞きしても良いですか。

松尾さんの写真

松尾

僕は、これまで2回出向していました。1回目は経産省、2回目は芸能事務所。キャリアパスも、経理、マーケティング(現在のAIST Solutions業務の一環)、経産省、監査室、芸能事務所、今の広報と本当に様々な経験をしてきました。ただ、それぞれのキャリアは繋がっていると感じます。 例えば、芸能事務所でのプロモーション経験は広報に活きていると思いますし、経産省での経験は、産総研を俯瞰的に見る視点として役立っています。それぞれが繋がって今があります。
モチベーションと聞かれると、少し答えるのが難しいですが、一つひとつが毎回新しいので、新鮮な想いでやってきました。2年やればある程度分かってきて「ここを打ち出そう」というのも見えてきたりします。その繰り返しが楽しくてやってきたのかなと。

斎藤さんの写真

斎藤

私は人事ですが、今は研修や労務といった個別の人事対応というよりも、組織全体をどう変えていくかという仕事をしています。エンゲージメント向上のためにどうするかとか、DE&Iの風土を作るにはどうしたらいいのかとか…抽象的で経営寄りの目線も含まれていますが、そういったことを日々考えています。
私もモチベーションと聞かれると難しいですが、自分のプライドと他者からの感謝かなと思います。研究職や総合職、同僚も含めて、この人たちに恥じない仕事をしなければという想いがありますし、やはり現場から感謝されると喜びにつながりますね。

宮下さんの写真

宮下

人事は現場への影響力が大きいですからね。例えば、人事が作る制度一つで、産総研で働く全ての人を困らせてしまうことも考えられる。だからこそ、自分も人事にいた時は特に現場を意識して制度設計をしていました。現在のDEI人事部員にはプレッシャーをかけてしまいますが、ぜひいい制度を作ってほしいと思いますね。

斎藤さんの写真

斎藤

目の前の一人ひとりではなくて、少し遠くから組織全体のために、どう制度を作っていくか、というのは面白さであり、難しさですね。頑張りどころです。

斎藤さんの写真
宮下さんの写真

宮下

私は、これまで研究者が企業連携する時のお手伝いや、大きなプロジェクトに対してテーマを作るコンサルティングや共同研究プロジェクトの提案をしてきました。昨今、社会から研究者に求められることってすごく増えていて。研究して論文を書くのはもちろん、外部資金も取ってきてください、社会への説明責任も果たしてください、スタートアップを目指してください…スーパーマンか?みたいな。産総研の場合は、たまに出来ちゃう研究者がいるのが恐ろしいのですが。ただ、全ての研究者にそれを求めるのは現実的ではないと思っていて。研究者の皆さん、想いと志はあるのですが、社会実装に向けたビジネスのいろはを知らないという方もいらっしゃるんですよね。私は少し経営や事業開発のことがわかるので、そういう方々の想いを実現できる人になりたいと思っています。マーケティングも組織も財務も経営もできて、研究者が「このシーズを使って事業やりたい」と自分に持ってきてくれたら、なんでもかなえてあげられる存在になりたい。そんな志を持ち、高いモチベーションを維持して日々働いています。

渡邊さんの写真

渡邊

総合職の皆さんの熱い想いを感じました。私は研究職なので、研究のモチベーションになるかと思いますが、私は今、幹細胞などを用いた再生医療分野の研究開発を行っています。再生医療は比較的新しい研究分野で、これまで治療が難しかった病気に対してもアプローチできると期待されていますが、まだ一般的な医療としては普及していない。市場も確立していない分野なので、世の中のニーズも含めて探索をしながら研究開発を進めています。新しい技術を開発して、これからの治療に、たくさんできることがある、貢献できるというのはモチベーションですね。

猪股さんの写真

猪股

研究者はやっぱり、自分の知らないことを知るという研究そのもの、知的好奇心が全てのモチベーションではないでしょうか。人のできないことをやりたい。自分の知っているもので新しいものを作るのもすごく楽しいですし、考えるだけで楽しいことはたくさんあるんですよ。一方で、総合職の皆さんのモチベーションが何かも気になっていたので、今日そこが聞けたことは、とても新鮮でした。

宮下さんの写真

宮下

文系でも、研究職でなくても、日本の大きなイノベーションや科学技術の発展の力になれるのは、他の企業ではあまりできないので、モチベーションになりますよね。

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4.

社会における産総研の役割について

産総研は、変化がダイナミックでスピーディー。
だからこそ、日本の産業に変革を起こせる。

ぜひこの流れで、社会における産総研の役割や強みを伺いたいです。今まさに技術の社会実装を一番近くで担うAIST Solutions所属の宮下さんから、いかがでしょうか。

宮下さんの写真

宮下

産総研への産業界からの期待値、大きいですね〜!僕の仕事のクライアントは民間企業ですが、関わる中でビジネスの環境は大きく変わっていると感じます。流行りのところでいくと、カーボンニュートラルやDX、サーキュラーエコノミーなどがありますが、そういった中で、経営の世界では日本企業は組織変革が遅いと言われたりします。なぜかと言うと、リスクを取った意思決定が難しいんですよ。例えば、カーボンニュートラルにしても、十数年前の当時の企業なら「え、これがスタンダードになるの?ほんとかな?そこに研究開発投資できない。」という話になっちゃいます。ですが、産総研は次の社会課題やビジネスになるテーマを先駆けて、取り組んできているので、次のビジネスになる社会課題を技術としてどう解けばいいかを知っていることも多いです。
AIST Solutionsができたのも、まだビジネスの市場がないところに飛び込んで、事業を作っていくため。日本が新しい事業変革や事業領域に飛び込む時に、飛び込み方を教えて、一緒に事業を作っていくのが産総研グループです。ちょっと先の未来に対して、技術を使った解法をもちながら、日本の産業変革のファーストペンギンとなる取り組みを一緒に創りたいですし、それを行うのが産総研の役割であり強みだと思っています。

斎藤さんの写真

斎藤

社会における産総研の役割は、宮下さんが言ってくれた通りだと思います。日本全体の産業変革に関わる尖った事業をしますという時には、やはり研究力は必要で、産総研はそこで求められていると思います。ただし、そのためには最先端で多様な分野の研究者が集まってくれる組織にする必要があって、それが人事の仕事なんじゃないかなと。研究所はコンサル会社っぽいと思っていて。知的産業ですし、「研究者の持つ力」という無形資産が重要。人についてはすごく見ていますし、どうしたらその人の持つ魅力をアピールできるか、というのは大事ですね。

松尾さんの写真

松尾

組織に注目してみると、大学は教授がいて連合体だと思うんですが、産総研は組織立って動いている印象があります。例えば、僕が経産省に所属していた時にやりとりをしていた産総研の人工知能研究センターには、当時で400人ぐらいの人がいました。これだけの規模の組織を立ち上げて、何か課題に立ち向かっていこうというのは、他の研究機関だと難しいかもしれない。求められている役割に応じて柔軟に動けることは、産総研の強みであり、らしさだなと思います。2023年7月に設立したG-QuATもまさにそうなんですよね。産総研はとんでもない勢いでうまく進んでいく。そのダイナミズムというか、プロジェクト志向はすごくいいところだし、強みかな。

宮下さんの写真

宮下

産総研は、ビジョンを立てて1年くらいで変わりますよね。組織全体としてのパワーが非常に大きいなと感じています。

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5.

産総研の未来と今後の挑戦について

役割とスケールを拡張しつづけ、
フロントランナーとして最先端を走る。

皆さんありがとうございます。そんな産総研ですが、今後どうなっていくと良いと思いますか。産総研がこれからチャレンジしていくことなど、皆さんの考えられていることを教えてください。

 猪股さんの写真

猪股

未来、やっぱりAIST Solutionsですよね。高度な知識や新技術を軸に、革新的、創造的な経営を展開していくような、産総研発のベンチャービジネス創設や民間企業との連携による新規事業の創出がより望まれていくと思います。研究して、新しいビジネスをつくって、社会を変えていく、という一連の流れを組織全体で頑張っていけるといいですね。それが産総研の未来ですし、大学や他の研究所とも一線を画すような組織になれると考えています。

斎藤さんの写真

斎藤

まさにAIST Solutionsをつくったのはチャレンジですよね。産総研本体は組織として大きいので、社会実装して製品化する役割を外に出して、民間とスピーディーに連携していくのは重要だと思います。

松尾さんの写真

松尾

大きな世の中の流れの中で、産総研が乗るべきだと思う波は二つあります。一つは、国の研究所として政策的に求められている大型プロジェクトを実行できる組織であること。もう一つは、社会実装の担い手として、他の研究機関と比べてもフロントランナーのポジションにいるので、その価値を発揮していくこと。総合職も数十年前は大学事務と近い仕事でしたが、社会実装に関する業務など、業務の幅がどんどん拡張しています。組織全体として、自分たちができることをどんどん増やして、社会に貢献できる方法をより広げていければと思います。

宮下さんの写真

宮下

多分、数十年前の産総研の事務職員(当時)は、事務が仕事の中心でした。研究者の活動が、研究室で論文を書くというものが主だったからです。ところが、研究者の活動のダイナミズムが増すほどに、支援する我々に求められる能力や専門知識もどんどん増えていきます。日本の産学連携は、ポテンシャルに対してうまく価値が発揮できていないものも多いです。研究者と支援者の職種の壁や、支援者の能力向上など、もっと変わっていくべき部分もあると思っています。産総研が産学連携のフロントランナーとして成功事例を見せていくことで、社会全体のカルチャーも変革していけるといいと思っています。

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渡邊

自分の研究と産総研の未来で言えば、社会課題に対して、新しい技術を開発して、より良い課題解決に繋げていくこと。研究現場では民間企業出身の方も増えて、新しい流れができてきました。研究そのものに着目すると、例えば細胞をただ培養をするだけでなく「スケールアップしたらこうなります」など、基礎研究のその先を見据えた話が普段の会話で出てきます。そんなことを考えつつ研究できるのが、すごく面白い。研究会で企業出身の方が研究内容を発表してくれることもあり、社会や基礎研究のその先のことがすごく身近に感じられます。企業連携の時の参考にもなりますね。

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宮下

知識としては知っていても、実際に近くで働く人から「製品化する時ってこういう課題があるんだよ」って直接聞くのは、腑に落ち方が全然違いますよね。新しい見識や感覚って、人との出会いから得られると思います。産総研って人が集まりやすくて、出会いやすい。企業と研究者のマッチングの仕事でも、企業には「こんな面白いテーマやっている研究者いるんですね!」と、喜ばれますし、研究者も企業から「これすごいっすよ!こんなことに使えます!」と言われたら、やってみようかなって気持ちになりますし、その出会いで人の心に火が付く瞬間がとても好きです。

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6.

研究職と総合職の関係性、お互いへの感謝について

互いにリスペクトと感謝をもって、
想いに共感できる人たちと未来へ飛び込んでいく。

ありがとうございます。最後に、今日いろんな話をしていただいて、総合職と研究職、お互いにリスペクトをしている部分や日頃感謝していること、感じている思いがあれば、ぜひ一言ずついただけますか。

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斎藤

まずシンプルに、研究者の皆さんは研究でご飯を食べられているのがすごい。私は研究に人生をかけられなかったので、研究で生きていこうと決めてプロである研究者には個人的にすごくリスペクトがあります。理系卒の総合職も産総研は多いですが、研究領域の話になると、やっぱりうちの研究者すごいな、と盛り上がります。人生30年、量子研究やっていますとか、発生学研究やっていますとか、すごいですよ。

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猪股

それでいいのかな、ってたまに思いますけどね。それで言うと総合職の皆さんは、やっぱり業種が多岐に渡っていますよね。自分のやりたいことに対して、それぞれ専門の方がいるので、仕事をお任せしてフィードバックをもらうことで、より確実なものとなって、滞りなく仕事が進められることが本当にありがたいです。研究者もやることが年々複雑化しているので、例えば、設計の取次は、ファシリティマネジメント部と、企業との連携はAIST Solutionsと一緒に仕事をしています。たまに会うと、お礼の言葉をすごく伝えています。非常に良い関係を保ちつつ、お互いリスペクトしあって仕事を進めていけています。

渡邊さんの写真

渡邊

猪股さんがおっしゃった通りだと思います。総合職の皆さんは、産総研の経営方針や組織体制を熟知されていて、より良い組織の構想を常に考えてくださっている。ちょっとした機会でお話しをしても、幅広い視点からアドバイスを下さり、頼れる存在だと感じます。私も、皆さんに頼っていただけるような研究者でありたいと思っています。

渡邊さんの写真
宮下さんの写真

宮下

総合職は年次を重ねるなかで、いろんな部署を経験すると、モチベーションや研究者の方へのリスペクトも全然変わりますね。僕はバックオフィス系の仕事をやっていたこともありますが、担当の研究者がすごくアクティブで、その人が何か思いつくたびに、「うわ、また型にはまらない新しい仕事がすごく増えるなあ、やだなぁ」と思っていたんですよ。でも、社会実装の部署に来て、その研究者の活躍を目の当たりにして、「この人の制度やルールにハマらない発想と活動が、こんなに社会の役に立っているんだ」と、目から鱗だったんですよね。純粋にリスペクトしましたし、そりゃ新しい仕事も発生するな、と思ったんですよね。バックオフィスだけだと見えないんです。僕は、想いのある研究者が好きなので、その人たちの想いを形にしていきたいですね。

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松尾

確かに皆さん、想いに共感できる人と仕事したいというのは多いですよね。例えば、産総研が主導して策定した機械学習品質マネジメントガイドライン。これは経産省に出向中からまさにプロジェクトを作るところを見てきたので、あのような形で成果が世に出ていくことを見られるのは、すごくいいなと思っています。また、市場としてみると、企業から研究機関への研究費の支出、オープンイノベーションのマーケットは、ここ10年で2倍以上に膨らんでいて、パブリックセクターにしては珍しい成長市場だなと思います。そこに飛び込んで、みんなで一緒に新しいマーケットを作っていけるのは、すごく面白い環境だと思いますし、その環境で仕事ができることが素敵だと思っています。

宮下さんの写真

宮下

やっぱり、ビジネスの知見のある人だけじゃなく、研究者のディープなところに簡単にアクセスできて、一緒にディスカッションして作っていけるのは、あんまりない仕事ですね。研究成果を出すのも簡単なことではないですし、人によっては、10年ぐらい成果が出ないということも聞きます。想像できませんがそういう時はつらいのではないかなと思います。

渡邊さんの写真

渡邊

乗り越えるには諦めないことですね。

全員

一番大事ですね。

皆さん、本日はたくさんお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

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