企業でも大学でもない
“第3の選択肢”
星を見るのが好きな子どもでした。中学生の時、親にせがんで天体望遠鏡を買ってもらい、宇宙工学を学ぼうと決めたのが高校生のころ。いつか自分の技術を宇宙に飛ばしたいと夢見て、修士課程では月や惑星で活躍する「宇宙ロボット」に関する研究をしていました。宇宙に関わる仕事に携わりたいと思っていたので、修士課程修了後大手電機メーカーに就職。ところが、自分の希望と会社の方針が折り合わず、1年で退職して大学に戻ったんです。修士課程在籍時にお世話になった教授には「最低3年は勤めてから戻ってきなさい」と叱られましたが……。
それから紆余曲折あって、新たにできた宇宙関係の研究室に移籍。そこの教授が、前年まで産総研で宇宙ロボットを研究していた研究者でした。実験のために産総研を訪れたことがあり、規模の大きさに圧倒されたのを覚えています。その研究室で助手、助教も務めながら博士課程を修了したのですが、教授の退官とともに研究室がなくなることになってしまって。
次の行き先を考えた時、企業でも大学でもない“第3の選択肢”が産総研でした。会社の方針ではなく、やりたいと思ったテーマを研究して、実用化まで持っていきたい。それなら産総研だなと。また、当時「宇宙より先に、地上の社会課題を解決するロボットをまずやらなくては」という認識に変わってきたのも大きかったですね。入所後は、障がい者支援ロボットなどのサービスロボットに携わるところから、産総研のキャリアがスタートしました。