変革につながるアイデアは、きっと研究の最前線にある。日本最大級の公的研究機関・産総研の公式ウェブマガジン。

地質形成砂箱実験

地質形成砂箱実験

2025/02/06

地質形成砂箱実験 地震や断層運動の過程再現

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    国家事業に参画

     産業技術総合研究所(産総研)では、地質災害の軽減を目指し、防災・減災に役立つ地質調査と研究開発を実施している。その一環として、文部科学省の科研費事業「Slow-to-Fast地震学」に参画し、プレート境界断層の形成過程を解明するアナログモデル実験装置の開発と研究を行っている。

     この「Slow-to-Fast地震学」はスロー地震と普通の地震メカニズムとその関係性を解明することを目的としており、われわれのグループでは、日本周辺の沈み込み帯において、沈み込む堆積物やプレートの形状が巨大地震を引き起こすプレート境界断層の形成に与える影響を研究している。

    教育にも活用

     山脈や断層などの地質構造は、地殻変動の結果として生まれる。だが、どのような力や動きがそれらを形成したのかを知ることはできない。モデル実験は地質現象を単純化・模型化できるので、地質構造の形成プロセスを理解する手段として有用である。

     そのため研究だけでなく、教育や科学普及の場面でも活用されてきた。特に砂を用いた砂箱実験は、重要な役割を果たしてきた。なぜなら砂の集団的な動きは上部地殻の力学特性と類似しており、プレート運動に伴う大規模な地質構造の形成過程を再現できるからである

    研究者自ら開発

     産総研の取り組みの特徴は、陸海の地質図および磁気・重力図の作成を業務とする研究者が、自ら装置の開発と実験を行っている点にある。観測データを基にした実験を行い、実験から得られた知見を野外調査で検証する、といったフィードバックを可能にする点で大きなメリットがある

    砂箱実験で行った、地層モデルの変化の例

     また、数値シミュレーションは、さまざまな条件設定が可能であり、地震や断層運動における複雑な物理的プロセスの再現に有効であり、砂箱実験では測定不可能な内部の応力変化なども計算できる。産総研では、砂箱実験と数値シミュレーションを相互に補完して用いることで、包括的な視点から地質構造の形成メカニズムの解明を目指している

     画像解析技術の進展で、砂箱実験における砂体の変形量を正確に測定できるようになり、実験結果の情報量が格段に向上している。モデル実験は地殻変動の研究において、今後も重要な役割を果たすと期待されている。産総研は、砂箱実験と数値シミュレーションを用いて、地震学や地質学の発展および地質災害の軽減に貢献する。

    地質情報研究部門
    資源テクトニクス研究グループ
    研究員

    高下 裕章

    KOGE Hiroaki

    お名前+肩書の写真

    この記事へのリアクション

    •  

    •  

    •  

    この記事をシェア

    • Xでシェア
    • facebookでシェア
    • LINEでシェア

    掲載記事・産総研との連携・紹介技術・研究成果などにご興味をお持ちの方へ

    産総研マガジンでご紹介している事例や成果、トピックスは、産総研で行われている研究や連携成果の一部です。
    掲載記事に関するお問い合わせのほか、産総研の研究内容・技術サポート・連携・コラボレーションなどに興味をお持ちの方は、
    お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

    国立研究開発法人産業技術総合研究所

    Copyright © National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
    (Japan Corporate Number 7010005005425). All rights reserved.