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地下水の地図を作る

地下水の地図を作る

2026/03/26

地下水の地図を作る “見えない流れ”可視化

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    循環型の資源

     産業技術総合研究所(産総研)は、2025年3月に水文環境図「No.15 大井川下流域」を公開した。水文環境図とは、産総研が公開する地球科学図の一つで、地下水を主題とした図である。これまでに関東平野や富士山など12地域がウェブで公開されている。

     地下水は、広義には地下にある水を指し、年間を通して水温が安定して水質も良好で有用な水資源である。国内で利用される地下水は、その多くが循環型の水資源である。自然界では、海で蒸発した水蒸気が雲を作り、雲が地上に雨をもたらし、雨水の一部が地下に浸透して地下水となって、最後は海へと流出する。この一連の水のつながりを「水循環」と呼ぶ。

    適切な維持必要

     このように循環する水資源を持続的に利用するためには、適切な水循環の維持が必要である。例えば、雨水が地下に浸透する量(涵養量)を超えて地下水を揚水する状況が長く続いた場合、地下水の補給量と使用量のバランスが崩れ、やがて周辺の地下水位は低下し、さらに悪化すると地盤沈下が発生する。一度沈下した地盤が、自然に元に戻ることはない。また、硝酸性窒素などの水質汚染は、地下水の流動に伴って広がる可能性があり、その解決には長い時間を要する。地下で発生する問題を認識し、解決のための対策を立てるには、地下水の状況を把握する必要がある。しかし、地下水は地下を流れているために目視できない。

    大井川下流の地下水の分布図

    変遷が分かる

     この見えない地下水を可視化するため、地域や流域単位で地下水について解説したものが水文環境図である。同図には、地下水に関する情報(地形、地質、帯水層、地下水位、水質、水温など)が、説明書とともに収録されている。おのおのの情報は一枚の地図上で重ねて表示可能で、例えば地下水位の分布や流動(図)、地下水位の季節変化、水質や水温の現状と過去からの変遷などが分かる。このような情報を整備しておくことで、地域における水資源のステークホルダー(自治体、企業、市民など)が地下水の状況を把握し、共通認識の下で水資源の利用や保全に向けた議論や行動ができる。

     

     今後も、将来世代にわたる水資源の持続的利用の実現に向けて歩めるように、地下水の地図の整備に努めていきたい。

    地圏資源環境研究部門
    地下水研究グループ
    主任研究員

    小野 昌彦

    ONO Masahiko

    小野昌彦主任研究員の写真

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