謎解き・太陽系の歴史
-小惑星と隕石から解き明かす太陽系形成進化過程-
\宇宙にあこがれた!研究者に聞いてみた!/
ゴリゴリゴリゴリ………
すりつぶしているのは、イルメナイト(=チタン鉄鉱)と呼ばれる岩石。とても細かな「砂」にして、月の表面を再現した「ひとさじのイルメナイトと輝石の混合実験」の準備をしています。この研究成果を発表した地質情報研究部門 リモートセンシング研究グループの松岡 萌 研究員に話を聞いてきました。(2026/2/24 プレスリリース)
Q 岩石をすりつぶして、どんな実験をするんですか?
月の表面は、意外にもサラサラの砂で覆われているんです。
イルメナイトという岩石を50 μmほどの細かい砂状にして月の表面を再現しようとしています。真っ黒のイルメナイトの砂に、白い輝石の砂を置いて、反射スペクトルを測る実験をしています。
すりつぶす前の塊状のイルメナイトです。チタン鉄鉱とも呼ばれます。実験に使うのは、地球で採れたものです。
タングステンカーバイドでできた頑丈な乳鉢・乳棒ですりつぶしたイルメナイトです。このままではまだ実験に使えないので、さらに細かくしていきます。
反射スペクトル計測用の台座に置いた、イルメナイト粉末(黒)と、その上に配置された輝石(白)の粉末です。この試料の反射スペクトルを計測します。
どんどん細かくしていきます。根気のいる作業です。
Q 他にも、月探査衛星のデータを使った研究をしていると聞きました。
探査衛星で撮ったハイパースペクトルデータと、月を模した砂や小惑星などから持ち帰った鉱物の分析を組み合わせることで、月や星の成り立ちについて、新しいことが分かってきているんです。
例えば、「はやぶさ2探査機」が宇宙で「小惑星リュウグウ」を調べたデータと、「リュウグウ」から実際に採集された砂や地球へ飛来した隕石を実験室で分析したデータの両方を組み合わせることで、小惑星や惑星、さらには太陽系の成り立ちについて新しいことが分かってきているんです。
今回教えてくれた松岡さん、手に持っている「推し隕石」も研究者ならではの、好きなポイントがありました。
推しポイント:
炭素質隕石:有機物や水が含まれる始原的な隕石。脆くて壊れやすいため地球上ではなかなか手に入りにくいですが、実は飛来元のC型小惑星は小惑星帯ではメジャーな天体の1つです(もう1つはS型小惑星)。
小惑星は、太陽系で惑星が形成したプロセスで、惑星になれなかった小さな天体の生き残りと考えられています。つまり、惑星の原材料がそのまま生き残った太陽系の化石が小惑星だといえます。特にC型小惑星は、有機物や水といった熱に弱い物質が保持されていることから、惑星がつくられた当時の太陽系の情報を今も保存しているタイムカプセルとして、重要視されています。JAXAのはやぶさ2探査機やNASAのOSIRIS-REx探査機が探査したのもこのタイプの小惑星でした。
推しポイント:
人類は火星からのサンプルリターンをまだ実現していません。唯一、火星の石を手に入れられる手段が隕石です。ほとんどの隕石は小惑星がふるさとですが、1970年代には既に火星からの飛来が示唆される隕石群(SNC隕石と呼ばれる)が見つかっていました。NASAの火星探査機Vikingが火星大気を測定したデータと、SNC隕石の一部の希ガス(貴ガス)等の同位体組成が火星大気の組成と同じことが示され、一連の隕石群が火星起源であることが突き止められました。
2026年度打ち上げ予定のJAXAのMMX探査機は、火星の月からのサンプルリターンを目指しています。火星の月の上には、このような火星の石のかけらも混じっているかもしれませんね。
……鉱物の分析とリモートセンシングから宇宙の謎を解明する話は、ワクワクで面白くて、広報も取材時間が足りなくなるほどでした。
もっと詳しく聞きたい方は、地質標本館で開催中の特別展にあわせて開催される講演会で、じっくり松岡さんのお話を聞いてみてくださいね。
地質標本館 特別展 「空間と波長で広がる地質学 -リモートセンシング-」
講演会は4月18日(土) 14:00~ 開催。下記ウェブサイトから事前登録受付中!特別展は6月28日(日)まで開催しています。
地質標本館 特別展「空間と波長で広がる地質学 -リモートセンシング-」