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日本の2050年カーボンニュートラル実現に向けたシナリオ分析

日本の2050年カーボンニュートラル実現に向けたシナリオ分析

2026/03/19

日本の2050年カーボンニュートラル実現に向けたシナリオ分析数理モデルを用いて日本のCO2排出削減をシミュレーション

研究者の写真
    KeyPoint 2050年カーボンニュートラルをどう実現するか──。ゼロエミッション国際共同研究センター 小澤暁人主任研究員らの研究チームは、エネルギーシステム全体を対象に、再生可能エネルギーや水素発電、革新的技術などを組み込んだ数理モデルを開発。カーボンニュートラル実現に向けた複数のシナリオを分析し、2050年にはゼロエミッション電源とCO2除去技術が不可欠であることを定量的に示しました。

    研究の背景:不確実性に挑むシナリオ設計

     2020年、日本政府は2050年までに「温室効果ガス排出を全体としてゼロにする」カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。日本の温室効果ガス排出の約85 %はエネルギー起源CO2であり、その削減は脱炭素化の核心です。しかし、CO2削減に寄与する革新的技術の多くは未成熟で、将来の普及には不確実性が伴うため、複数のケースを想定したシナリオ分析が不可欠です。ゼロエミッション国際共同研究センター 小澤暁人主任研究員らの研究チームは、エネルギー供給・変換・利用を一体的に扱う数理モデルを開発し、政策目標を起点に逆算するバックキャスト手法で、2050年に必要な技術構成を導きました。

    得られた成果:ゼロエミッション電源+ネガティブエミッション技術がカギ

     改良した産総研MARKALモデルを用い、条件設定を変えた6ケースを試算しました。共通の前提は、2030年にエネルギー起源CO2を45 %削減、2050年に100 %削減(2013年度比)。結果は明快で、2050年に排出ゼロを達成するには、再生可能エネルギーや原子力、CO2を回収・貯留する技術(Carbon Capture and Storage, CCS)付き火力、水素発電といったゼロエミッション電源に加え、大気中のCO2を直接回収し、貯留する技術(Direct Air Carbon Capture and Storage, DACCS)やバイオマスの燃焼により発生したCO2を回収・貯留する技術(BioEnergy with Carbon Capture and Storage, BECCS)によるCO2除去が不可欠であることがわかりました。発電部門のCO2排出は2040年にゼロとなり、その後BECCS利用でマイナスに転じます。一方、産業部門では排出が残るため、2050年には約2億1500万トンのCO2をDACCS・BECCSで除去する必要があると試算されました。電源構成では、再エネが49~62 %、水素発電が23~38 %を占め、調整力電源として水素の役割が強調されました。これらの結果は、化石燃料中心の社会からクリーンエネルギー中心の社会へと移行しようというグリーン・トランスフォーメーション(Green Transformation, GX)戦略で掲げられた水素・アンモニア導入目標とも整合し、技術と社会の接続点を具体化しています。

    今後の展望:より包括的な戦略へ

     今回の分析は、ゼロエミッション電源とネガティブエミッション技術に焦点を当てましたが、今後は合成燃料、バイオ燃料、カーボンリサイクルなど多様なオプションを組み込んだシナリオを検討します。さらに、エネルギー価格や経済成長率、人口などの社会経済要因を考慮し、より精緻なモデルへ進化させます。産総研は、技術開発と政策立案をつなぐ“羅針盤”として、日本の脱炭素社会の実現に向けた道筋を具体化し続けます。


    Akito Ozawa, Tsamara Tsani, Yuki Kudoh, Japan's pathways to achieve carbon neutrality by 2050 – Scenario analysis using an energy modeling methodology, Renewable and Sustainable Energy Reviews, Volume 169, November 2022
    DOI: 10.1016/j.rser.2022.112943
    産総研:日本の2050年カーボンニュートラル実現に向けたシナリオ分析
    「2050年カーボンニュートラル」実現への道

    ゼロエミッション国際共同研究センター
    環境・社会評価研究チーム
    主任研究員

    小澤 暁人

    OZAWA Akito

    小澤 暁人主任研究員の写真
    産総研
    エネルギー・環境領域
    ゼロエミッション国際共同研究センター

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