変革につながるアイデアは、きっと研究の最前線にある。日本最大級の公的研究機関・産総研の公式ウェブマガジン。

視覚障がい者の感覚代行

視覚障がい者の感覚代行

2026/01/15

視覚障がい者の感覚代行 支援手法 当事者と共創

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    世界で22億人

     視覚障がいで、近視や遠視など見え方に不具合を抱える人は世界で約22億人(2019年)と推計される。特に、全盲・弱視のような重度視覚障がい者は、世界で約3600万人(19年)、国内は約27万人(22年)とされる。また、障がい当事者の情報バリアフリーの規定として、国内では障がい者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の施行(22年)などの法的整備が進んでいる。今日のような情報化社会では、視覚障がいの有無によらず情報を受け取れる方法の発展・普及が一層必要とされている。

     視覚障がい者の情報取得の手法の一つに、元来は視覚的に認識する情報を、聴覚・触覚を通して把握する「感覚代行」がある。技術面ではパソコンやスマートフォン上の画面情報を音声で読み上げるスクリーンリーダー、点字化して表示する点字ディスプレイなどが挙げられる。しかし、「感覚代行」に関する知覚特性の解明や訓練法の開発、社会参加の現状理解やその支援手法の開発は未だ発展途上にある。

    VR・音を活用

     産業技術総合研究所(産総研)では、視覚障がいのある当事者と共創して、残存知覚特性やニーズの調査、支援システム設計・構築、フィールドでの実践を行ってきた(図に事例)。調査・研究では、弱視者が臨場感を感じる仮想現実(VR)空間の条件、全盲者における音による空間知覚とその活用状況、視覚障がい当事者における学び直しニーズの調査とリカレント教育指針の構築を行った。システム設計・構築では、ゴールボールなどのパラスポーツにおける音知覚の訓練支援システム、障がい状況に合わせた地図/経路確認システム、情報アクセシビリティを考慮したインクルーシブゲームが主たる成果である。

    産総研が障がいのある当事者と協力して行った調査、支援システムの設計等やフィールドでの実践を表した図

    互助の社会構築

     フィールドでの実践は、開発システムの評価や、インクルーシブリサーチに基づく障がい当事者が中心に行うシステム制作、障がい当事者・非当事者による福祉機器のコ・デザイン、ゲームアクセシビリティを活用した合理的配慮を学ぶワークショップ実施などがある。これらの事例は、障がい当事者の自助や各種団体・社会による互助の支援につながる成果である。 今後は、法制度・技術・利用者が連携する社会包摂エコシステムを構築していきたい。

    人間社会拡張研究部門
    ソシオデジタルサービスシステム研究グループ
    上級主任研究員

    三浦 貴大

    MIURA Takahiro

    三浦 貴大上級主任研究員

    この記事へのリアクション

    •  

    •  

    •  

    この記事をシェア

    • Xでシェア
    • facebookでシェア
    • LINEでシェア

    掲載記事・産総研との連携・紹介技術・研究成果などにご興味をお持ちの方へ

    産総研マガジンでご紹介している事例や成果、トピックスは、産総研で行われている研究や連携成果の一部です。
    掲載記事に関するお問い合わせのほか、産総研の研究内容・技術サポート・連携・コラボレーションなどに興味をお持ちの方は、
    お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

    国立研究開発法人産業技術総合研究所

    Copyright © National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
    (Japan Corporate Number 7010005005425). All rights reserved.