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中性子非破壊分析

中性子非破壊分析

2026/01/08

中性子非破壊分析 電池劣化、結晶を画像化

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    高い透過性

     エックス線(X線)撮影は、X線透視による非破壊イメージングである。X線は電子と相互作用するため、測定対象物が原子番号の比較的大きな原子を含んでいる場合に適している。中性子線もX線と同じ電荷を持たない放射線であり、物体を透過しやすい。しかし、中性子は原子核と相互作用し、それは原子番号に依存しないことから、中性子は水素原子までも捉えることができる。さらに、中性子は“適度な”質量を持つため、X線にはできないイメージング技術を可能にする。

    回折現象を利用

     中性子はX線と同様に波動性があるので、回折現象を通して結晶やナノ粒子、薄膜などを分析できる。中性子の波長は、室温に相当するエネルギー領域で、結晶格子の間隔と同程度である。このため、結晶回折による透過中性子の減少が、のこぎりの刃状のブラッグエッジとして、中性子透過スペクトルに現れる。減少の位置や形状は、中性子の波長の関数であり、結晶の種類や歪み、配向などで変化する。2次元検出器で得られた各ピクセルの透過スペクトルを分析すれば、結晶のさまざまな情報をピクセルサイズの解像度で画像化できる。この手法は、ブラッグエッジイメージングと呼ばれる。

     産総研では、リチウムイオン二次電池の劣化やセメントによる二酸化炭素(CO2)吸収のブラッグエッジイメージングに成功した。

    リチウムイオン二次電池へのブラッグエッジイメージングの応用についての概要図

    相談窓口を用意

     産総研は、小型中性子解析施設AISTANSを運用している。ブラッグエッジイメージングに最適化され、1日から1週間でデータを提供できる。測定スケジュールの柔軟な管理が可能で、至急の依頼や研究開発にも容易に対応できる。ブラッグエッジイメージングや中性子回折測定に適した第1ビームラインおよび中性子ラジオグラフィーやコンピューター断層撮影装置(CT)に適した第2ビームラインは、独立して使用可能である。ブラッグエッジイメージングによる電子・機械製品の非破壊診断のほか、ラジオグラフィーやCT撮影に関して気軽に相談できる窓口も用意している。

     日本で中性子を利用できる施設は、茨城県の大型施設ならびに北海道大学や理化学研究所の小型施設に限られる。AISTANSにより、産総研は産業界に対し、中性子線の利用の場の提供と利用の促進を図っている。

    分析計測標準研究部門
    先進ビーム計測研究グループ
    主任研究員

    木野 幸一

    KINO Koichi

    木野 幸一主任研究員

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