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マイクロプラ 正確に把握

マイクロプラ 正確に把握

2025/08/07

マイクロプラ 正確に把握 プラズマで微粒子分析

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    血液からも検出

     マイクロプラスチック(MP)と呼ばれる5ミリメートル以下のプラスチック片が、環境中のみならず食品や人の血液中からも検出され、MPによる環境・健康への影響が懸念されている。MPの主な発生源としてペットボトルやレジ袋などが劣化・破砕されてできた微細な破片や、自動車走行時に生じるタイヤ粉塵や衣類の洗濯時に流出する化学繊維などがある。

    生態系に被害

     近年、自然環境中でのMPの化学変化による生態系の被害が報告された。タイヤ粉塵に含まれる酸化防止剤が環境中で変性し高い毒性を持つようになり、雨水によって河川に流出した結果、ギンザケが大量死した。MPによる被害の予測・対策は喫緊の課題であり、そのためには海洋や河川、土壌などの環境中のMPのモニタリングおよび定量的な環境・健康リスク評価が必要である。環境中の曝露解析やリスク・有害性評価には、MP濃度(重量または個数)・サイズ・素材に基づく議論が必要である。しかし、環境中で採取されるサンプルには夾雑(きょうざつ)物が多く、このような条件下で微小なMPの量・サイズ・種類を迅速かつ正確に把握する手段が現状では存在せず、MPの全貌を解明する上で大きな課題となっている。

     この課題を解決するため、産業技術総合研究所(産総研)は高時間・空間分解誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)を開発した。本装置では夾雑物の除去などの前処理が不要である。一般的なICP-OESは霧状にした溶液サンプルをプラズマに導入し、その発光スペクトルからサンプル中の元素の同定・定量を行う。

    粒子を原子化&発行で読む高時間・空間分解誘導結合プラズマ発光分光分析装置

    粒度分布得る

     産総研が開発した装置では、粒子ごとの原子発光の位置と発光スペクトルの経時変化を高い時間空間分解(1マイクロ秒, 10マイクロメートル)で計測できる。MP粒子の主成分である炭素原子をはじめとしたスペクトル発光強度の時間変化は粒子サイズや化学構造に依存するため、従来では行えなかったサイズ・組成・構造の同時分析が可能となった。道路粉塵を直接分析することで、タイヤ、ブレーキ、アスファルトなどの各種粉塵ごとの粒度分布を得ることが可能である。さらに本装置は粉体だけでなく液中微粒子の計測にも対応しており、機能性ナノ材料をはじめとする幅広い粒子分析への応用が期待できる。

    環境創生研究部門
    環境対策技術研究グループ
    研究グループ長

    寺本 慶之

    TERAMOTO Yoshiyuk

    寺本 慶之研究グループ長の写真

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