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電子デバイス冷やす

電子デバイス冷やす

2025/12/25

電子デバイス冷やす 相界面設計で熱伝導活発

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    電力受領が急増

     生成AI(人工知能)やデジタル改革(DX)の拡大でデータセンターの電力需要は急増しており、全消費電力の1割以上は機器冷却に使われている。機器側でも、窒化ガリウムや炭化ケイ素などの高性能半導体デバイスは発熱密度が高まり、限られた面積で効率よく熱を逃がす技術が欠かせない。そこで注目されるのが「ベーパーチャンバー」である。

     これは、薄い板の内部で冷媒を沸騰・凝縮させ、その潜熱で熱を面内にすばやく運ぶ仕組みである。小型・省エネ・静音を同時に狙える点が強みで、スマートフォンやコンピューターでも採用が広がる。

    水滴が跳ねる

     従来のべーパーチャンバーは、凝縮した液膜が冷却面にたまり、熱の通り道をふさぐため伝熱性能が低下する。産業技術総合研究所(産総研)はこの弱点に「相界面の設計」で挑む。微細加工技術を用いた凹凸構造と材料選定で液体・固体・気体の相界面をうまく制御すると、水滴が自発的に跳ねて飛び去る「跳ぶ水滴」が起きる。これはマイクロサイズの水滴同士が合体する際に放出される表面エネルギーが、壁面との付着力を上回った場合にのみ現れる現象である。

     さらに、水をはじく多肉植物の葉を模倣して、冷却面に微細な階層構造を作製することで、接触角170度を超える超撥水表面を開発し、時間が経過しても凝縮液膜が付着しない冷却面を実証した。開発したべーパーチャンバーでは、直径10マイクロメートル級の水滴が跳ね上がり、落下後も再付着せず、液膜の形成を抑えるため、水滴の核生成と凝縮成長が繰り返し起こり、熱伝達が活発になり冷却効率を維持できる。

    蒸発潜熱を利用した冷却技術についての概要図

    脱炭素の切り札

     また、サーバーを低沸点冷媒に浸す「液浸沸騰冷却」でも、表面の微細構造や濡れ性(疎水/親水)を最適化することで、気泡の発生・離脱や液の補給サイクルを整え、非常に高い発熱密度にも安全に対応できる。結果として省エネ性と信頼性が向上し、装置の小型化やコスト低減にもつながる。

     一方で、表面処理の長期耐久性や量産プロセス、接合界面の管理など、実装に向けた課題も残る。産総研は企業・大学と連携して残された技術課題を解決し、早期実用化を進め、AI時代の電力負荷を和らげる脱炭素の切り札として育てていく。

    省エネルギー技術研究部門
    熱流体システム研究グループ
    主任研究員

    馬場 宗明

    BABA Soumei

    馬場 宗明主任研究員

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