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可逆的な接着技術

可逆的な接着技術

2025/12/11

 

可逆的な接着技術 解体・リサイクル容易に

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    分別に課題

     地球環境保護やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現のための対策の一つに「リサイクル」がある。リサイクルするには、種々の材料から成る廃棄物を素材ごとに分別する必要がある。家電、自動車、電子機器などでは、プラスチック、金属、ガラスなどの異材が組み合わされており、特に接着剤で固定された部品の分離が困難である。接着により一体化した部品は、廃棄時に個々の素材を再利用できない。この問題の解決策として、熱や電気や光などの外部刺激によって容易に剥離できる「易解体接着剤」を用いれば、リサイクル性を大幅に向上させられると期待されている。

     自動車分野ではELV(廃自動車)指令に基づき、解体を前提とした設計が進められ、易解体接着剤の導入が広がっている。

    光・熱を利用

     産業技術総合研究所(産総研)では、使用後に分離・再利用が可能な「可逆接着技術」の研究開発を進めている。代表的な研究の一つに、キシリトールなどの糖アルコール骨格に複数のアゾベンゼンを組み合わせたアゾベンゼン系可逆接着剤がある。この接着剤は、アゾベンゼンの光異性化反応を利用している。アゾベンゼンは、照射された光の波長によって可逆的なシスートランス立体構造変化を示す。アゾベンゼンがトランス構造の時は液体だが、シス構造になると固体となる特性を利用し、光の波長を切り替えるだけで接着と脱着を制御できる材料系を実現した。また、糖アルコールに結合したアントラセンの光二量化反応を利用したシステムでは、光照射によりアントラセンが二量化して硬化して接着し、加熱により再び解体して液化して脱離する特性を持つ。このように、光や熱といった刺激を活用して、化学結合を可逆的に切断・再形成する分子設計を行っている。現在は、可逆接着材料を下塗り層として利用することで、従来の接着剤がそのまま使える設計に取り組んでいる。

    光架橋し熱で液化する材料を、接着剤と被着体の間に導入することで、可逆的な接藩を実現の図

    保守・修理にも

     これらの可逆接着技術は、使用済み製品の容易な分解や部品再利用を可能にし、リサイクル工程の省エネルギー化にも寄与する。また、再接着による再組立てが可能なため、メンテナンス性や修理性の向上にもつながる。「一度きりの固定」ではなく、「必要に応じて再接着可能な接合」として接着技術を循環型社会の中核技術にしたい。

    材料基盤研究部門
    首席研究員

    秋山 陽久

    AKIYAMA Haruhisa

    秋山 陽久首席研究員

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