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鉱床発見への筋道

鉱床発見への筋道

2025/11/13

 

鉱床発見への筋道 天然ガスの起源見極め

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    生成菌か地熱か

     天然ガスの主成分であるメタンは、メタン生成菌が作る「生物起源」と地下深部の地熱によって発生する「熱分解起源」に分類される。生物起源の天然ガスは比較的浅い地層にのみ存在する。一方、熱分解起源の天然ガスはより深い地層で発生し、その一部が浅い地層に移動し天然ガス鉱床を形成する。熱分解起源の天然ガスが浅い地層で発見された場合、より深い地層にはより大きい天然ガス鉱床が存在すると推測する。天然ガス鉱床の開発では、メタンがどちらの起源によるものかの見極めが重要である。

    地下環境を再現

     メタンの生成起源や生成経路を特定する際の指標にはメタンの炭素と水素の「安定同位体シグナル」(安定同位体の存在比)が用いられる。地下由来の生物起源メタンは特徴的な安定同位体シグナルを示すが、このシグナルをメタン生成菌の室内培養実験で再現した例はなく、同位体地球化学と微生物学の解釈には大きな隔たりがあった。

     一般的なメタン生成菌の培養実験は、密閉したガラス製容器に培養液とメタン生成菌を加え、気相にメタン生成の基質となる水素を大量に充填し、ほぼ大気圧下で実施されてきた。一方、地下は高圧かつ低水素濃度環境である。今回、産業技術総合研究所(産総研)は地下特有の高圧培養装置を開発し、有機物を分解し水素を緩やかに発生する細菌とメタン生成菌を一緒に培養することで、地下環境のメタン生成反応を忠実に再現した。

     同条件下で生成されたメタンの安定同位体シグナルは、地下の生物起源メタンの安定同位体シグナルと明確に一致した。さらに、あらかじめ培養容器に熱分解起源メタンを加えた状態でメタン生成菌を培養したところ、添加した熱分解起源メタンの安定同位体シグナルがメタン菌によるメタン生成に伴って生物起源のシグナルに上書きされる現象を発見した。

    メタンは起源の見極めが重要の図

    見落とし発見

     浅い地層に移動してきた熱分解起源の天然ガスがメタン生成菌によって生物起源に上書きされた場合、より深い地層に存在する熱分解起源の天然ガス鉱床を見落とす可能性がある。今回の発見は、天然ガスの生成起源や生成プロセスを正確に推定するための基盤的知見として、天然ガス鉱床の探査方法の再考を促し、これまで見落とされていた新しい天然ガス鉱床の発見につながる。

    地圏資源環境研究部門
    生物地球科学研究グループ
    研究グループ長

    眞弓 大介

    MAYUMI Daisuke

    眞弓 大介研究グループ長

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