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界面活性剤 発酵で生産

界面活性剤 発酵で生産

2025/11/06

 

界面活性剤 発酵で生産 バイオものづくり促進

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    循環型に転換

     現代社会は、大量生産・大量消費の線形経済から持続可能な循環経済への転換期を迎えている。そこで求められるのが、循環経済に適用できる新たなイノベーションである。その一つに「バイオものづくり」がある。バイオものづくりとは、バイオマスなどの再生可能資源から、遺伝子技術などを活用して微生物や動植物などの細胞によって物質を生産することである。

    いち早く実用化

     私たちのグループは、この分野が今ほど注目されていなかった21世紀初頭から、連携企業との共創により、微生物を用いた有用物質の生産とその社会実装を進めている。実用化を達成した事例の一つが、バイオサーファクタント(BS)である。これは、酵母や細菌などの微生物を用いて、糖類や植物油などの原料から「発酵技術で生産する界面活性剤」である。

     界面活性剤は、あらゆる産業で使用されるキーマテリアルであり、その多くが限られた資源である石油に由来する。特徴の一つは、例えば洗剤のように、使用後はそのまま環境中に放出・廃棄され、回収・リサイクルが想定されていないことである。したがって、資源循環の観点や環境への配慮からも、天然由来品や植物原料への転換が求められている。

     バイオサーファクタントは、天然由来、完全生分解、優れた環境・生体適合性など、循環経済を支える素材としての全条件を満たしている。また、糖やペプチドなどが主骨格で、生物由来の特異な分子構造を有することで、汎用の合成界面活性剤と比較して百から千分の一の使用量で同等以上の界面活性を示し、さらに抗菌活性やさまざまな生理活性も示す。バイオサーファクタントは既存製品の単なる代替というだけなく、新しい分野への適用や新産業の創出も期待できる。

    発酵技術で生産する界面活性剤の図

    欧米大手も参入

     世界に先駆けてBSを実用化したのは日本企業である。現在、国内5社がそれぞれ特色ある製品を市場に展開している。その一方で、欧米の大手化学企業がBS市場に本格参入したことから、今後の市場拡大が予想される。

     私たちは、このような世界の動向・競争の激化を見越して、国内BS研究の活性化を目的に、先述の5社や関連の大学と「BS勉強会」を立ち上げた。国内企業や大学、研究機関の関係者が集うこの活動を通して、BSの普及に努めている。

    機能化学研究部門
    バイオケミカル研究グループ
    研究グループ長

    福岡 徳馬

    FUKUOKA Tokuma

    福岡 徳馬研究グループ長

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