変革につながるアイデアは、きっと研究の最前線にある。日本最大級の公的研究機関・産総研の公式ウェブマガジン。

タンパク質 迅速検出法

タンパク質 迅速検出法

2025/10/30

 

タンパク質 迅速検出法 発光基質を混ぜるだけ

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    がん検出に応用

     生物発光は、発光基質の酸化を発光酵素が助ける酵素反応によって光が生じる自然現象である。生物発光を利用した分析技術は、蛍光法のように励起光源を必要としないため、自家蛍光や光毒性の影響がない。これらの特長から、生物発光はがん細胞の検出や食品検査、感染や疾病の診断指標となるタンパク質の分析に利用されてきた。

     しかし、利用に際し、専門家が測定対象に発光酵素を標識しなければならなかった。

     産業技術総合研究所(産総研)は、発光酵素以外のタンパク質であっても、特異な化学構造の発光基質を酸化して発光させる「発光酵素的機能」を持っていることを世界に先駆けて報告した。新型コロナウイルスのスパイクタンパク質、ヒト免疫グロブリン、ヒト血清アルブミンなど、複数のタンパク質でこの機能を確認している。これらは、「生物由来の発光酵素でしか生物発光を生み出せない」という従来の常識を覆す発見である。

    ウミホタル由来

     また、産総研はこの機能を利用し、発光酵素や抗体を一切用いず、タンパク質を簡便かつ迅速に検出する新しい手法を開発した。新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の例を以下に示す。ウミホタルルシフェリンは、発光酵素によって発光するウミホタル由来の発光基質である。しかし、スパイクタンパク質によっても、酸化されて発光する。この現象を応用して、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を含む唾液とウミホタルルシフェリンを混合すると、スパイクタンパク質の濃度に応じてウミホタルルシフェリンの発光強度が変化した。この発光強度を測定することで、唾液中のスパイクタンパク質を1分以内で検出できるようになった。

     同手法は、保存条件に制約のある抗体や酵素などの試薬、大型機器を必要とせず、操作も極めて簡便である。感染や疾患の診断に対する「どこでも誰でも簡単に測定できる」オンサイト分析の需要にも対応できる。

    タンパク質を簡便で迅速に検出の図

    構造の評価も

     タンパク質の「量」だけでなく「構造」の評価も本手法で可能となり、抗体医薬品などの品質評価技術にも応用できることが明らかとなった。本手法は、医療診断や創薬分野における次世代のタンパク質分析法として、社会への貢献が期待される。

    健康医工学研究部門
    ナノバイオデバイス研究グループ
    主任研究員

    西原 諒

    NISHIHARA Ryo

    西原 諒主任研究員

    この記事へのリアクション

    •  

    •  

    •  

    この記事をシェア

    • Xでシェア
    • facebookでシェア
    • LINEでシェア

    掲載記事・産総研との連携・紹介技術・研究成果などにご興味をお持ちの方へ

    産総研マガジンでご紹介している事例や成果、トピックスは、産総研で行われている研究や連携成果の一部です。
    掲載記事に関するお問い合わせのほか、産総研の研究内容・技術サポート・連携・コラボレーションなどに興味をお持ちの方は、
    お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

    国立研究開発法人産業技術総合研究所

    Copyright © National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
    (Japan Corporate Number 7010005005425). All rights reserved.