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光コムによるガス分析

光コムによるガス分析

2025/10/16

光コムによるガス分析 正確なスペクトル迅速解析

 

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    周波数「物差し」

    光コムとは、「光でできた物差し」である。目盛に相当するのは数百万本のレーザー光で、それぞれ正確な周波数間隔でコム(くし)状に並んだレーザー光が合わさった形で光コムを成す。光コムは周波数を高精度に測定できる光源で、その「物差し」としての不確かさは10の20乗(1垓=1兆の1億倍)分の1以下と極めて正確である。産業技術総合研究所(産総研)では、光コムの正確さとそれを生かす高度な制御技術を駆使し、光コムを使った分光ガス分析の研究を進めている。

    温室効果ガス(GHG)の測定、産業プロセスで発生するガスの監視、微量有毒ガスの検出などで、非破壊・非接触でガスを正確に検出・測定できる技術の一つが2台の光コムを用いる「デュアルコム分光」である。原子や分子には特定の周波数の光を吸収する性質があるため、ガスの中を光コムが通過するとガスの種類によって光コムの特定の周波数の光が吸収されて弱くなる。

    干渉信号を測定

    ガス中を通過した光コムのビームとガス中を通過しないもう一つの光コムのビームを重ね、その干渉信号から光コムの各周波数成分が測定対象ガスによってどれだけ吸収されたかを示す吸収スペクトルを取得し解析する。同手法では広い波長域で高分解能、高精度で正確な吸収スペクトルが迅速に得られる。このスペクトルの解析からガスの種類や濃度、温度が分かる。

    左はデュアル分光イメージの図、右は関連する実験装置の写真

    感度向上目指す

    ガス分析の高精度化のため、産総研は、干渉信号を正確に測定できる光コムを独自開発した。この光コムを周波数制御して、2台の光コムの間で周波数成分同士の揺らぎを光の位相レベルで抑えた(相対線幅1ヘルツ以下)。さらに、光路長揺らぎに起因する干渉信号の位相変動を補償するプログラムを実装し、干渉信号を長時間平均してノイズを低減した。

    また、光コムへの周波数揺らぎの要求が厳しい広い波長域の一括測定では、世界最高となる帯域140 THzを分解能48 MHzで実現し、複数種のガスを高精度に分析できる実力を示した。メタンガスの測定では、濃度換算の不確かさが1万分の1レベルに達した。

    今後は、解析手法の改善、光共振器の導入、中赤外波長の利用により、濃度測定精度と感度の向上を目指す。実際の現場での測定を見据え、さらなる技術開発を進めていきたい。

    物理計測標準研究部門
    光周波数計測研究グループ
    主任研究員

    大久保 章

    OKUBO Sho

    大久保 章主任研究員の写真

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