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AI融合で効率計算

AI融合で効率計算

2025/09/04

AI融合で効率計算 シミュレーション高速化

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    構造的な違い

     さまざまな分野でデジタル変革(DX)やデジタルツインの導入が進み、サイバー空間での試行による施策評価を低コストかつ高速に行う手段としてシミュレーションとAI(人工知能)の融合が期待されている。しかし、AIとシミュレーションは基本的な計算原理が異なる。

     シミュレーションは専門家の知見に基づき定められたシステムのルールなどに沿って計算を実行し、システムの挙動の予測データを生成する(ルールからデータを知る)演えき的手法である。一方AIは、大量のデータからルールを自動で抽出することでシステムの挙動を予測する(データからルールを知る)帰納的技術である。この構造的な違いにより、両者の融合は一筋縄では進まなかった。

    大きな障壁

     新薬や新素材の開発などの予測対象が特定されている分野では、シミュレーションの負荷の高い部分をAIによる関数で代替して高速計算を実現する「サロゲートモデル」の応用が加速している。

     一方、製造や物流など、多くの人や物が動的に関わる分野では、全体の挙動や現象を把握することが重要となる。このようなケースではシミュレーションをAIモデルで置き換えることは望ましくない。そのためシミュレーションが実世界を忠実に表現するためのキャリブレーション作業(シミュレーションパラメーターを最適化する事前設定)が重要である。この作業は非常に計算負荷が高くシミュレーション活用の大きな障壁であった。

    上は演繹的計算と機能的計算の違い、下はキャリブレーションをAIで高速化するイメージ図

    多様な展開検討

     産業技術総合研究所(産総研)はこの課題解決に向け、AIモデルを活用したキャリブレーション高速化技術を開発した。AIがサロゲートモデルを介して設定を学習し、超高速かつ高精度にキャリブレーションするというもので、大規模都市交通シミュレーションでは約500倍、製造ラインでは1,000倍の高速化を達成した。

     現在、生成AIを巨大な演えき的計算シミュレーションと捉えることで、この技術の多様な展開を検討中である。例えば大規模言語モデルにおけるプロンプト(AIへの指示)設計はキャリブレーションに相当するため、効率化・高速化が可能となる。今後もAIとの真の融合に向けて技術を進化させ、現場でのシミュレーション活用促進に貢献する。

    人工知能研究センター
    機械学習研究チーム
    研究グループ長

    山崎 啓介

    YAMAZAKI Keisuke

    山崎 啓介研究チーム長の写真

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