変革につながるアイデアは、きっと研究の最前線にある。日本最大級の公的研究機関・産総研の公式ウェブマガジン。

線量計試験場の開発

線量計試験場の開発

2025/08/28

線量計試験場の開発 小型加速器 放射線源に

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    被ばく管理

     近年、日本の原子力発電所では、新しい安全基準に基づき、再稼働のための審査が進められている。また、医療現場において、医療用加速器によるがん治療の普及が進み、放射線治療関連の医療従事者は増加傾向にある。しかし、このような現場で、事故により人が大量の放射線を浴びれば、健康に重大な影響が生じる。そこで、原子力発電所や医療などの放射線を扱う作業現場では、法律に規定された安全基準を超えないように、線量計による被ばく管理が行われている。

    X線ビーム調整

     線量計の応答は、基準となる強度があらかじめ測定された放射線場で試験される。放射線強度の国内の基準値は、産業技術総合研究所(産総研)が保有する「国家標準」により、決められている。

     被ばく管理用の線量計の応答試験には、放射線発生源として、高強度の放射性同位元素(RI)が用いられる。しかし、海外の商用原子炉の停止などの影響で、高強度RIの入手が困難となっている。2023年に、産総研はこの問題に対処すべく、国家標準として用いられる従来のRI (セシウム137)に替わり、小型加速器を放射線源として使用する線量計試験場を開発した。小型加速器から照射されるX線ビームのエネルギーをフィルターで調整することにより、セシウム137からのγ線照射による線量計応答と同じ結果を得ることに成功した。

    従来の放射線試験場から小型加速器を使用した放射線試験へというイメージ図

    出力を安定制御

     RIの放射線強度は放射性崩壊によって時間的に減衰するため、定期的な交換が必要となる。一方、加速器では、そのような出力の減衰はなく、出力はRIと比較して持続的である。また、放射線出力のオン・オフを電気的に制御できるため、RIよりも安全に利用できる。

     さらに、テロ対策などの法的なセキュリティー要件もないため、施設維持においても優位である。加えて、RIによるγ線照射装置は、決まった放射線のエネルギーしか照射できないが、加速器X線はエネルギーを自由に調整できる。これにより、複数の異なるエネルギーでの線量計応答試験が可能となるため、エネルギー特性を考慮した線量計の改良が進めば、被ばく管理の高精度化も期待できる。

     産総研では、小型加速器による線量計の代替試験手法への移行を目指し、多様な線量計の試験データの取得を進めている。

    分析計測標準研究部門
    放射線標準研究グループ
    主任研究員

    石井 隼也

    ISHII Junya

    石井 隼也主任研究員の写真

    この記事へのリアクション

    •  

    •  

    •  

    この記事をシェア

    • Xでシェア
    • facebookでシェア
    • LINEでシェア

    掲載記事・産総研との連携・紹介技術・研究成果などにご興味をお持ちの方へ

    産総研マガジンでご紹介している事例や成果、トピックスは、産総研で行われている研究や連携成果の一部です。
    掲載記事に関するお問い合わせのほか、産総研の研究内容・技術サポート・連携・コラボレーションなどに興味をお持ちの方は、
    お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

    国立研究開発法人産業技術総合研究所

    Copyright © National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
    (Japan Corporate Number 7010005005425). All rights reserved.