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小型ガス中微量水分計

小型ガス中微量水分計

2025/08/21

小型ガス中微量水分計 1億分の1の水捉える

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    製造業には厄介

     水は私たちの生命活動・生産活動に不可欠な物質である一方、半導体や二次電池などの製造工程では、性能劣化や歩留まり低下を引き起こす厄介な存在である。青色発光ダイオード(LED)の製造工程では、材料ガス中にわずか1ppm(ppmは100分の1)の水分が混入するだけで、発光効率が80%以上低下する。微量の水分管理が必須とされる工程では、さまざまな種類の微量水分計が使用されている。

     産業技術総合研究所(産総研)はガス中微量水分の一次標準(国家標準)を開発し、各種微量水分計の性能試験を実施した。従来型の微量水分計のほとんどが十分な性能を有しないことが明らかとなる中、米国製のキャビティリングダウン分光法(CRDS)微量水分計が、高い性能を持つことが確認された。CRDSは、測定するガスの入った共振器(キャビティ)にレーザー光を共振させて、共振器から出る光の減衰の時定数(リングダウン時間)の変化を測定することで、光の吸収量を得る分光法である。

    導入の壁

     しかし、このCRDS微量水分計は製品サイズおよび重量が大きく、製造ラインへの直接導入が困難であり、また、装置価格が高額である。そのため、CRDS微量水分計の普及は未だ限定的である。

    国産で高性能化

     この状況を打開するため、産総研はCRDS微量水分計の小型化に取り組んだ。小型化の主な問題は感度と精度の低下である。感度は試料ガスと光が作用する長さ(光路長)が長いほど高くなる。そこで、5センチメートルの空間内にレーザー光を多数回往復させ、合計3キロメートル以上の有効光路長を確保することで高感度化した。精度については、独自開発の信号解析技術により問題を解決した。その結果、半導体分野で要求される10ppb(ppbは10億分の1)が計測可能な、世界最小レベルのCRDS微量水分計の開発に成功した。同技術は国内の民間企業に移転され、製造ラインへの直接導入が可能な小型CRDS微量水分計として製品化されている。この製品は、従来製品に比べて容積4分の1、重量3分の1、価格2分の1となっており、2024年度のグッドデザイン賞「ベスト100」に選定された。今後は現在のサイズを維持しつつさらなる高感度化を目指し、他分野への応用を見据えてより高濃度領域での測定を可能にする技術開発も進めていく。

    物質計測標準研究部門
    ガス・湿度標準研究グループ
    上級主任研究員

    阿部 恒

    ABE Hisashi

    阿部 恒上級主任研究員の写真

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