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ナノプラスチック調査

ナノプラスチック調査

2025/08/14

ナノプラスチック調査 土壌粒子への吸着量評価

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    生態リスク懸念

     粒径5 mm未満のプラスチック片は、マイクロプラスチックと定義され、自然環境や海洋生物、さらには人体に悪影響を及ぼす可能性がある。粒径1nm〜1μmのナノプラスチックは、マイクロプラスチックの劣化や粉砕により生成される。マイクロプラスチックよりも生物の体内に取り込まれやすいことから、プラスチックによる生態リスクはさらに高まると考えられる。ナノプラスチックに関しては、水域を中心に研究がなされているが、報告例はまだ数件にとどまっている。

     産業技術総合研究所(産総研)は、土壌中でのマイクロ・ナノプラスチックの実態を把握するため、これらを定量する手法の確立を急ぐとともに、地下水への移行性や生態リスクを研究している。本稿では、研究成果の一部を紹介する。

    吸光度を比較

     マイクロ・ナノプラスチックは、土壌粒子の間隙に蓄積したり、雨水や地下水の流れに乗って土壌粒子の表面で吸脱着したりしながら、土壌中を移動している可能性がある。しかし、プラスチックが混入している土壌において、土壌粒子と区別して、ナノプラスチックの移動の状況を評価することは難しい。そこで、我々は紫外線可視光分光光度計を用いた検出手法を開発した。この手法は土壌懸濁液とナノプラスチック懸濁液から得られる吸光度特性曲線を比較することで、濃度の算出が可能な2つの波長の組み合わせにより、土壌中のプラスチックの検出を可能にした。

    土壌中のナノプラスチックの移動のイメージ

    土壌種に依存

     UV可視光分光光度計を用いた定量手法を活用して、砂質土と黒ぼく土へのポリスチレン製ナノプラスチックの吸着量を比較した。ナノプラスチック試料は、市販品を使用した。この実験から、黒ぼく土の吸着量は、砂質土のそれよりも最大約100倍大きいことが明らかになった。これは、両者において、単位体積あたりの比表面積および粒子表面の帯電状態が異なることが、主な原因であると考えられる。土壌中のプラスチックの移動と挙動は、土壌種に強く依存する。

     今後は、ナノプラスチックについて、さまざまな土壌を用いた通水実験ならびに数値シミュレーションを通して土壌の間隙への蓄積や土壌粒子への吸着現象を再現し、土壌中のナノプラスチックの移動と挙動を明らかにしたい。

    ネイチャーポジティブ技術実装研究センター
    自然資本DB構築・価値解析研究チーム
    研究員

    土田 恭平

    TSUCHIDA Kyouhei

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